「こころみ」なら「ひと安心」と、感じていただける心身の医療を目指して【こころみクリニック 大澤亮太先生】

更新日 2024年08月21日 | カテゴリ: 専門家インタビュー

働く人の心を支えたい。回復の場づくりとしてクリニックを開業


――先生のご経歴を教えてください。文系学部から医師を志望して医学部に入学したとうかがいましたが、どのような経緯だったのでしょうか?


はい、最初は一橋大学の経済学部に入学しました。ただ、就職先を考えていくなかで次第に、人と直接関わって喜びを感じられる仕事を目指したいという思いが強くなりました。その中で、身近にいた医師の知り合いが活躍している姿を見て、医師を目指すようになりました。

――精神科医を目指した理由を教えてださい。


研修医時代は、国際医療福祉大学熱海病院で研修をしていました。
熱海はとても高齢化が進んでいる街で、高齢化率が50%近くあります。高齢者の多さから熱海は日本の50年後の姿を先取りしているとも言われるのですが、そのような環境で糖尿病などの生活習慣病と多く向き合うことになり、住民の方々の行動変容やそれに関わる心理的側面に興味を持ちました。
また、研修プログラムの一環で、学校で保健室の先生をしていた時期もあります。 担当していた2ヶ月の間に、心の不調が原因とみられる症状を抱えている生徒がたくさん保健室に訪れました。 その様子を見て、「生徒たちがこのまま社会に出るのは大変そうだ。心の不調にアプローチできないか?」と考え、産業医を目指してメンタルヘルスを学ぶために精神科医の道に進みました。


――そこから、開業に至ったきっかけを教えてください。


精神科医として外来や入院の経験を積みながら、産業医の仕事も並行して行っていました。産業医としては、従業員の方の心身の健康相談はもちろんですが、会社としての対応をコンサルティングするような業務を経験しました。
しかし企業との取り組みの一方で、心の不調を抱える従業員の方々は切り捨てる方向にいきがちでした。次第に、もう少し寄り添った対応ができるほうが、人材が不足していく世の中において、中長期的にみて企業にもメリットがあるのではないかと思うようになりました。 そのようなタイミングで、私と近しい立ち位置の精神科医の先輩が産業医の会社を立ち上げたため、治療の場として連携できるクリニックを立ち上げることとなりました。

家族や友人に自信を持って勧められる、誠実な治療を心がけて

こころみクリニック

――こころみクリニックに訪れる患者さんは、どのような方が多いのでしょうか?


一番多いのは、適応障害に悩む方です。ストレスに対する反応が体に出ており、環境と患者さんの心の折り合いがついていない状態です。 その他にも当院にいらっしゃる患者さんは、働いている方だけでなく学生さんや主婦の方など、現役世代の患者さんが多いです。不眠に悩まされている方もご相談いただくので、心の病気として受診することの敷居は高くありません。

――普段の診療で大切にしていることは何でしょうか?


自分の家族や友人にお勧めできるような医療の提供を目指しています。 「良い治療」の定義は人それぞれですし、そのうえ精神科は成果が特に目に見えづらい領域です。 そのため、私も含めクリニックのメンバーは、「自分の家族や友人などの大切な人が同じ症状を抱えたときにも自信を持ってこの治療は勧められるか?」と常に想像しながら治療に当たるようにしています。 一見漠然としているようですが、これが私にとって誠実で良い治療だと考えます。


――印象に残っている患者さんのエピソードがあれば教えてください。


双極性障害を抱える患者さんのエピソードです。 職場では非常に精力的に活躍されていましたが、ある日不調に陥り、休職することになりました。その方はとても仕事ができる方だったのですが、自分でできてしまうからこそ、たくさんの仕事を自分一人で抱えがちでした。
治療を続けることで、生活リズムや仕事量をコントロールし、次第に他人に仕事を任せたり頼ったりする術を身につけ、少しずつ回復していきました。現在は自分の会社を立ち上げて活躍されていらっしゃいます。 病気という経験が気づきとなり、自分に合った仕事の仕方・生活の仕方を見出せて、社会的な成功につながった方です。

――先生は、治療の中でカウンセリングをどのように取り入れていますか?


当初は治療のサポートとして生活指導を軸としたカウンセリングを提供していましたが、現在は当院に在籍している臨床心理士による専門的な心理支援も充実させています。患者さんによっては心理士と医師の間で対話してカウンセリングの方向性を調整しています。
また、院内でもカウンセリングを行っていますが、患者さんの症状や状況に合わせて連携しているcotreeのオンラインカウンセリングを勧める場合もあります。


オン・オフ切り替えのコツはマイルールの習慣化。不調を防ぐアドバイス

こころみクリニック

――どのような状態になったら、受診すれば良いでしょうか?


いつも通りの生活がしづらくなっていて、自分だけではなんとかならないと感じる時は早めの受診をお勧めします。 具体的な症状が出ていてもそうでなくても、自分の感覚としてなんとかならないと感じるときは、クリニックに足を運んでみてください。

――クリニックを選ぶ時のチェックポイントを教えてください。


いわゆる「名医」にかかれば良いというわけではありません。患者さんと医師にも相性があります。 患者さんが「この人と一緒に治療をすればなんとかなりそう。」と思えるかが重要です。
つまり、誰が「名医」かは患者さんそれぞれにとって違うと考えています。相性の良さは他の条件だけではわからない部分がありますから。 カウンセラーも同様で、一緒に歩んでいくパートナーを焦らずに探していただければと思います。

――メンタル不調を未然に防ぐには、どうすれば良いでしょうか?


オン・オフを切り替えられることが重要です。 ぐるぐると繰り返し考えてしまい、考えに執着してしまっている状態、つまり反芻思考は、心を消耗しやすいです。
切り替えるには、マインドフルネスや運動がおすすめですが、それらを行うことが難しい人は「考えるマイルール」を作ってみてください。 例えば、考え事をする時は書く、お風呂の時だけ考えるようにするなど、ルール化して考えるメリハリをつくっていきます。これが習慣になると、だんだんオン・オフの切り替えが上手くなっていきます。

――先生ご自身のリフレッシュ方法があれば教えてください。


家庭菜園や保護犬仲間と遊んだりが息抜きでしたが、今では仕事が多くなってしまってできていません。2年前に借りていた20坪の畑も手放しました。今では娘と遊んだり、録画したドラマやドキュメンタリーをみたりくらいでしょうか。 私自身もルールを決めることを大事にしているので、考える時はマインドマップで整理してみたり、それができない時はぼーっとドラマやテレビを見たりしていて、こういうことが意外と大切だったりします。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。


当院の名前に含まれる「こころみ」には、「こころ」と「からだ(み)」を総合的に支える医療を目指していきたいという想いを込めています。 生活をする上で心身のお困りのことがあればぜひ、足を運んでみてください。

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