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魂の耕しとしてのカウンセリング|臨床心理士 細井八重子

更新日 2016年12月15日 |
カテゴリ: 専門家インタビュー
魂の耕しとしてのカウンセリング|臨床心理士 細井八重子

ーー本日は、先生が提供される心理療法について、お話を聞かせてください。まず、先生が受けられることの多い相談は、どんな相談でしょうか。


このカウンセリングハウスは、より良い心の生活を取り戻すための悩み相談の場として、様々に使って頂いています。最近は若いカウンセラーも増えて、子育て、うつ、不安など、学校や職場や家族の人間関係の悩みなど、 いろいろな相談がありますよ。

すごく便利な場所にあるわけではないけれど、来る途中に田や畑の緑があったり、川があったりして、通っていらっしゃる道中も含めての静かな時間を取り戻せる感じがするのでしょう。子どもから大人、最近はシニアの相談も増えています。個別のカウンセリングももちろん行っていますし、シニア向けのグループもしています。

ーーシニアグループですか。どんな風に進めていかれるんですか?


まずは自分が見た夢を記録してきてもらいます。それぞれの夢の記録を紹介して頂いて、どうしてそんな夢を見たのか、みんなで傾聴しながら深めていきます。年を重ねたときに、自分が心の奥でまだまだ生ききれなかった魂があえいで、それが夢の物語になったり、叫んだりすることがあります。

例えば孤島に一人でいるような夢を見たとして、どうしてそんな夢を見たかな~と考えたり、あるいは連想して、自分のあり方を振り返っていくヒントにします。すると、思いが高まって、「寂しい」とか、若い頃にかなわなかった気持ちをそのままひきずっていることを思い出したりします。それが、夢として出て来たのでは?と問いかけてみます。

また、これからの時代、シニアがどういう気持で過ごすのか、どう生きてきたのか、惨めな思いなど、そっと思い出しながら、過ぎて来た過去を振り返り、お互いを相手に語りつくして、果たして平穏な死なんてあるのだろうか?などということもテーマに含めて、華やかだった過去などもお互いに紹介しあったりするカウンセリングにトライして行きたいと思うようになりました。

ーーグループで行うことで、他の方の語りから気づくこともありそうですね。では、個別のカウンセリングは、どんな風に始まっていくのでしょうか。


最初は、まずじっくりお話をお聴きするところからですね。家族の悩みであれば、家族に対して感じている気持、憎しみや怒り、とまどい、といった感情や、家族との関係性なども語られることがあります。それをお聴きしながら、今の家族関係を見直すきっかけにしたり、過去に遡って「父が私よりも妹のほうをかわいがった」という姉妹葛藤があったことなどが語られます。すると、それは現在の妹的な人への苦手意識として現れてきたりもします。

「お母さんが厳しかった」という生い立ちの方は、年上の女性とうまくやっていくのが怖いと感じることがあります。そうした気持ちを吐露することで、うまく心を開けなくなっているのかもしれない。本当はどうしたいのか、と聞くと、「できれば仲良くしたい」という気持ちもあるのだと気づきます。「であるならば、できれば仲良くしたいという気持ちを捨てるのはもったいないよね」と、よりよく暮らしていくための方法をご一緒に話し合ってゆきます。

ーー過去の人間関係が、今の人間関係の苦手意識や、パターンにつながっていることに気づいていくんですね。


例えば人間関係のトラブルを抱えがちで、上司に気に入られないとか、認められなくてうつ的になってしまっている人がいたとします。お話をする中で、自分の中でひっかかっていること、繰り返していた物語に気づいていく。例えばそういうときに、精神分析でいうところの兄弟コンプレックスやマザーコンプレックスが出て来たりもします。

意外と重要でよく扱うのは「カインコンプレックス」でしょうか。カインは農作が好きで、弟のアベルは狩猟が好きでした。神様が肉をお好みだったので、カインは認められることが難しく、弟を憎み、殺してしまうようなことになる、という旧約聖書の物語がもとになっています。親に自分が認められなかったという怒りや悲しみが隠れていて、それを抱えていたのは自分の問題だったのかもしれない、と気づくことがあります。

それに気づくことで、気持ちの発散がしばしばできていきます。怒りや悲しみの感情って、そのままではなかなか表現できないですから、そのお話の中で気がつき、発散し、整理をし直し、生まれ変わってきます。

ーー気づくことで、整理ができて、変わっていくことができる…人によっては、それが難しいケースというのもあるのでしょうか。


そういう意味では、この頃は発達障害という観点から人格を理解するというのがかなり言われてきています。親子関係の中で受け継がれる人格もありますね。

子どもの気持ちがわからない親に育てられる中で、学校での友達関係に苦しんだり、極端に苦手な教科があったり、適応が難しくなり、問題児扱いされるようになったりする。もしかしたら発達障害的な素質があるのではないか、と見直していくと、得意なこと、不得意なことが明確になってきたりします。そうすると、必要なトレーニングを行うこともできます。自己理解を、何が得意で何が苦手かという側面からすすめていくことも必要になります。

うつや不安障害の裏側に、発達障害が隠れていることもあります。自分の苦手なことで、うまくいかないことが続くと、得意なことまで忘れてしまうこともあるし、努力でカバーしようとしすぎて、疲れてしまうということもあるでしょう。まずは親御さんに理解していただいたり、心理テストで能力のばらつきを知って、自分の生きづらさを知って、自分を受け入れることができたら、前向きな気持ちになれるでしょう。

そのために、最初はしっかりとお話をお聴きしています。私は心の中の自分探しとして、箱庭療法やコラージュ療法をお勧めすることが多いです。

ーー箱庭療法というのは、どんな心理療法なのでしょうか。


箱庭療法では、箱庭の中に人形やオブジェを並べていくことで、その人なりの物語を作り上げていきます。

例えば、砂を掘ってつくった海の底から乙姫様のようなものが現れたりします、その場面を作ることで、独身時代にさまよっていた気持ち、孤独な想い、男性との出会いを思い出したり。

今までは社会や家族の役割を演じながら、やってきた。役割のほうが先にたって、その役割を演じながらここまでやってきた、という気持ちとともに、あのときに忘れてきたもの、浜辺に置き忘れたもの、どう生きたかったのか…そういうことが浮かび上がってくることもあります。

日本の昔話のようなお話や、世界の神話のようなお話のモチーフが、ファンタジーのように箱庭で表現されたりして、少しずつ、お話が拡がり、ある時にはダイナミックな解釈がクライエントとカウンセラー双方に生まれたりします。

そのように自分の気持ちをたどって、人生の見直しをしていくことで、「あぁ、まだまだやり残したことがある」ということに気がついたり、少しおしゃれを始めたくなったり、お芝居が好きだったことを思い出したりして。

ーー箱庭の中の物語から、自分の気持ちや人生と向き合っていくんですね。


そうですね。箱庭表現より、より深いイメージが夢にしばしば現れます。

例えば俳優の夢、市川染五郎が夢に出て来たとして、それはユング心理学的に言うならば、その女性の心の中にある男性の魂「アニムス」像として、出て来たということになります。それがアニムスだとすれば、あなた自身の「男性性」というのは、それに近い人なんだろうか、ということを話し合います。

そして、市川染五郎から何を連想するのかというと、歌舞伎で演じる物語がありますね。演じる物語の中に、自分の気持ちや感情が溢れ出てきたりします。そうすると、あなた自身が持っていたけれども、出せなかった気持ちや感情につながることがあるだろうか、と考えていくんです。

そこではアニムスという、自分の男性性という「魂探し」をします。自分の魂の中の「女性性」の一方にある「男性性」という片割れを探すことで、心の中の全体像を知っていく。これって、まるで冒険のようですよ。お話をしていて、その方の中から出てくる発見は、とても力強くて。そういうものに触れると私自身もどきどき、いきいきして、楽しく感じますね。そういう喜びが生まれる場です。

コラージュ療法の場合は、それをコラージュ遊びの中から発見していきます。目に付いたパンフレット、雑誌、新聞広告の中から、切り抜いてもらって、画用紙に貼る。心のこだわりのドラマを見直していきます。

ーー先生の相談室には、箱庭療法につかう人形やオブジェが本当にたくさんあるんですね。

決まった種類の人形やオブジェが入った「箱庭セット」というのもあるんです。でも、私自身、その基本に加えて、世界中の民話やおとぎ話、神話に関連するお人形をエジプト、メキシコ、ギリシャ、トルコなど世界旅行を楽しみながら、集めました。

旅行先で女神の人形や僧侶の置物とかファラオとか、シンボリックなものを買ってきたりしているうちに、この20年でどんどん増えてきました(笑)。神話に関わるものが多いのは、神話と心は深く関係しているからなんです。神話というのは、人間が歴史の中でも繰り返してきた人間ドラマの基本的なお話です。ギリシャ神話の中で、妬まれて殺されている女神とか、壮絶な力関係の争いの中で戦う女王とか、そういったバラエティが、神話の中に散りばめられていますよね。

人形のひとつひとつには、物語があります。例えばここに「聖フランチェスコ」のお人形がいます。イタリアのアッシジという寺院で鳩を愛し、会話した僧侶です。自然や宗教、古代からの壮絶な争いの中で受け継がれてきた人間の魂として、大事にされたからこそ長い時間を超えて受け継がれてきたのでしょう。それは今を生きる人たちにとっても、生活の中のドラマとして、生きてつながって繰り返されていくのでしょう。

ーー神話の中に、人間の物語が受け継がれている…とても面白いですね。


神話だけではなく、例えばこの松尾芭蕉の人形。なぜかこれを好むのは独身の女性が多いのですが、生涯独身だった芭蕉は、旅の宿で隣に遊女がいたり、という艶っぽいお話もたくさん残っていますね。松尾芭蕉は「老賢人」というタイプの一人とも考えられて、多くの人が無意識に求めている心の中のイメージでもあり、心理学的には「元型、アーキタイプ」のひとりといえるでしょう。

自分が体験している出来事を、単に個人的な感情、経験として片付けてしまうのではなく、永遠につながってきた人間の心の営みであり、考えであり、思いであり、感性であると考えていきます。

また、私はときどき自分の神話を表現したくなって、箱庭をつくることもあって、つい先日も虹色の道が表現してみたくなって虹色のリボンを買ってきたりしました。人はそれぞれに何かを命がけでやってきた物語がとめどなく続いて、そうであれば、それが象徴するものは何か。では自分が一生懸命求めているものは本当は何なのか。箱庭に置かれたグッズを手掛かりにしてカウンセラーと対話をしながら、そういうことを確認していきます。

ーー自分の物語をつむぐ過程で、カウンセラーとのやりとりや、神話と重ね合わせたりすることで、物語をふたりで育てていくようなイメージでしょうか。


そういうことが起こっていくと、嬉しいですね。そんなときは、私も一緒に喜びます。カウンセリングは双方向の営みなんです。そんな双方向のプロセスの中で、深い「たましいの耕し」ができるようになっていきます。マンネリズムの中で働いている人は、今の社会では多いですよね。

でも、汗をかいて一生懸命お仕事をしている人ほど、なんだか元気だと思いませんか?

嫌だなぁ、と思いながら仕事をしていると苦しいですよね。ちゃんと「深い労働」をしている人って、元気なんです。そういう人のほうが疲れてしまいそうだけど、一生懸命やることで自分自身が活性化されて、人は元気になります。燃焼しきっ ている感じがする。そういう風に生きるきっかけ、深いたましいを取り戻すようなきかっけを、カウンセラーとの対話を通じて探していきます。

ーー「たましいの耕し」ですか。面白い表現です。確かに、日常の中ではなかなか自分がどう生きるのかと向き合うことは少なく、考え方も行動のパターンも、固まってしまっているようにも思います。


仕事を通して自分自身がまだまだ力を入れて取り組めない何かがあるとしたら、それは自分の心の掘り起こしにつながっていないという意味かもしれませんね。「たましいの耕し」が必要なのかもしれません。

自分が何をしたいんだろう、という気持ちが、シグナルとして現れているのかもしれません、そのひとつに、夢がヒントになるので、記録してみて欲しいですね。それから、仕事の人間関係で役割を生きるだけでは見つめるのが難しい「本音」と向き合ってみて欲しいと思います。

自分ひとりで「本音」を探っていくのが難しいと感じたら、カウンセリングを受けてみるのも良いかもしれません。

ーーありがとうございました。

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