今の日本は「不寛容社会」?「寛容である」とはどういうことか?
更新日 2017年05月08日 |カテゴリ: 人間関係を良くしたい

「不寛容社会」が話題に
近年、SNSやブログなどではささいなことで炎上したり、ちょっとした一言がきっかけで一斉にバッシングされたりといったことが頻繁に起こっています。
また、「近隣に保育所ができると子どもの声がうるさい」「除夜の鐘の音が騒音レベル」などと、昔だったらさほど話題にならなかったようなことが批判の対象になることも増えてきました。なんだかみんなが常にイライラしている・怒っているような状態と言っても過言ではないようです。
2016年6月にNHKスペシャルで「不寛容社会」というテーマの番組が放映されたことで話題になりました。「不寛容」とは「心が狭く、人の言動を受け入れないこと。他人のや欠点を厳しくとがめたてること」をいいます。まさに今の状況にぴったりな言葉です。
10年以上前に刊行された田口ランディさんの作品に「できればムカつかずに生きたい」というタイトルの著書がありますが、心穏やかに過ごすにはささいなことに怒ったりせず、「不寛容」の反対、「寛容」に生きられたら心も楽になるのではと思ってしまいますね。
「寛容」とはどういうこと?
では一方で「寛容」とはなんでしょう。「寛容」を辞書で調べると「心が広く、他人をきびしくとがめだてしないこと。よく人を受け入れる・こと(さま)」とあります(大辞林 第3版より)。
もともとは近世ヨーロッパで異教や自分とは違った思想・信条を容認する・受け入れるという意味で使われ始めた言葉だそうです。ヨーロッパの近世以前は、宗派の違いにより激しく対立しあった時代でした。
ちょっとした教義の違いや聖書の解釈の違いが対立や殺戮にまで発展した時代。近世への移行とともに異教に対しても受け入れる、容認するようになったからこそ、生まれた言葉なのかもしれません。
寛容になりたい人への心のコントロール・レッスン
1 )「正義」は人によって違う
「正義」と言うと硬いですが、「こうあるべき」と言えばいいでしょうか。いわゆる「こうあるべき」は人によって違います。「こうあるべき」という価値観をしっかりともつのは悪いことではありません。
でもそれにこだわってしまうと少しでもその価値観とずれた人を見ると許せなくなる「不寛容」な状態になり、怒りっぽくなってしまいます。そうなると結局イライラしてしまいますね。
世の中にはいろいろなものの考え方をする人がいます。
例えば、食卓にテーブルクロスをかける理由にもさまざまなものがあります。食卓を汚したくないからテーブルクロスをかけるという人もいれば、食卓の汚れが取れなくなってしまったのでテーブルクロスをかけるという人もいます。
「汚したくない」「汚れを隠したい」で考え方が違いますね。さまざまな場面や物事において、いろいろな考え方のパターンを知っておくと「こういう人もいるんだな」と、自分と違った考え方の人を受け入れしやすくなります。
2 )自分のなかの許容ゾーンを増やすと怒りにくくなる
アンガーマネジメント協会理事・安藤俊介氏は著書「この怒り何とかして!!と思ったら読む本」で、「思い込み」を3つのゾーンに分けて説明しています。
・OKゾーン:自分の価値観に合っているので頭にくることはない
・許容ゾーン:自分の“べき”とはやや違うが、まだ許せる
・NGゾーン:自分の“べき”と大きくかけ離れていて、許すことができない
このうち、自分の中の許容ゾーンを広げていくと、人に対して寛容になることができ、イライラも少なくなるとのことです。
著書では「LINEの返事いつまでなら許せますか」という例で説明をしていましたが、NGゾーンの対応をされてもまずは「何かあった?」と聞いてみたり、あらかじめ「いついつまでに返事がほしい」と伝えるなどの対策も取るようにすると良い、というアドバイスがありました。自分が心地よくいられる行動や対策を考えておくのも有効です。
イライラのもとになる情報を遮断するのも有効
以上、「寛容」の意味と寛容になるための心のコントロール法について解説しました。近年の不寛容な意見の多くはインターネットやテレビ、新聞などのメディアで触れることが多いようです。
特に自分の「こうあるべき」に合致したネガティブ意見に触れた時、つい反応してしまい、怒りが伝染してしまうことがあります。「寛容になる」とはちょっと違いますが、不用意に怒らないために、炎上メディアをなるべく見ない、ネガティブ意見をスルーするようにしたほうがいいかもしれませんね。
参考文献
・この怒り 何とかして!!と思ったら読む本(星雲社)
参考サイト
・NHKスペシャル 不寛容社会
・yahooニュース「ヒロト、若林、クドカン、森達也……それぞれが考える「不寛容社会」における“正義”」
・wikipedia 寛容
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