更新日 2024年08月21日 | カテゴリ: キャリア・人生・仕事の悩み
生きていく中では、様々な選択の場面があります。進路や住む場所、結婚相手や仕事選び。
小さなところでは日々の食事や毎日着る洋服、利用するサービスなど、特に現代社会では選択肢が無限に提示され、人は「選択」の場面に曝されています。
「どうしたらいいのかわからない」と悩んでいる人は、選択肢が多すぎて悩んでいるはずですね。選択肢が一つしかなければ、悩みようがないのですから。
インドで行われた研究によれば、結婚して1年目では恋愛結婚をした夫婦の満足度が取り決め婚の夫婦よりもかなり高い一方、10年後にはそれが逆転し、取り決め婚の夫婦の満足度のほうが著しく高くなっているという結果が出ています(Iyenger, 2010)。
一般的には自分で結婚相手を選んだほうが当然幸せな結婚ができると思われがちですが、実際にはそうではなく、相手を自分では選べなかったケースの方が長期的には幸せになっているのです。
実は「選択肢の数が少ない方が選択に満足する」という研究結果は、そのほかにも多く発表されています。
では、なぜ選択肢が多いと満足度が低くなってしまうのでしょうか。
多くの選択肢の中から「どうしたらいいんだろう」と考え続けることは、認知的資源を消耗します。あれやこれや考えているうちに疲れてしまい、「もういいや何でも」と投げやりになってしまった経験がある人も多いかもしれません。
選択肢が多いと、「選ばなかった選択肢がベストだった可能性」が高まります。選んだ選択肢に不満が生まれたときに、「あのとき別の選択肢を選んでおけばよかった」と後悔し、自分を責めてしまうことが、満足度の低下につながるのです。
「こんなにたくさんの選択肢から選んだのだから、最高の結果につながるはずだ」と考えることで、期待値が高まる結果、期待を裏切られる可能性も高くなります。
物事は多面的で、良い面もあれば悪い面があります。そして、多くの選択肢の中で「全ての側面で一番」という選択肢はなかなかないものです。ある点では良いけれどある点では劣っている……それでも最終的にこの選択肢を選んだ、というケースでは、劣っている点が際立つ状況に陥ったときに、「あっちを選んでおけばよかった」と考えてしまいがちになるのです。
さきほどのインドの結婚の例で考えてみましょう。
何かトラブルが怒ったときに、自分で選んだ相手であれば「別の人を選んでおけばこんなトラブルは起きなかったかもしれないのに!」という不満を抱いてしまうかもしれません。期待値が高かった分、「この選択は間違いだった」と自分を責めたり、欠点や期待はずれだったことが目についてしまいます。
しかし、最初から選択肢が存在しなければ「ああすればよかった」などという非生産的な考えに囚われることなく、「この与えられた環境でどうやったら問題を切り抜けられるだろう?」と考えることが自然に可能になるのです。また、期待をしていないので、ちょっとしたことに感謝できたり、喜んだりできますし、選択を後悔して今の幸せを見過ごすこともありません。
この話からわかることは、必ずしも「選択肢は少ないほうがいい」ということではありません。
人間は、複数の軸を総合的に考えて中立的に判断するということがとても苦手な生き物です。「ここが劣っている」ということを考え始めると、その事柄自体の印象が、その劣った一面に引っ張られてしまいますし、「ああすればよかった」と考えると選んだ選択肢の良いところが見えなくなってしまいます。
そして、人間の限られた認知的資源の中で「自分が選択した結果こうなった」と考えることが生み出す「評価的な考え方」や「後悔」は答えがない故に反芻されがちで、「どうしたらもっとよくなるだろう?」と考えを前に進めることを妨げてしまうのです。
ここで大切なのは、満足や不満、幸せや不幸という結論を生み出しているのは「事実」ではなく、あなたの「考え方」であるということです。
そして、あなたの選択を「良かった」と思えるため考え方のコツがあります。
・欠点ではなく、良い点に意識を向ける
・期待値を高めるのではなく、小さな「良いこと」にも感謝できる心を持つ
・過去の選択は所与のものと考え、「選んだ選択肢をどうすれば最大化できるか、良くできるか」と考える
たくさんの選択肢から選び取った後は、もう他の選択肢はなかったものとして、考えを切り替えていくべきなのです。
「どうしたらいいのかわからない」「どんな選択をしたらいいんだろう」と悩みすぎてしまう人は、特に注意が必要です。
この考え方には「ベストな選択肢が存在する」「ベストな選択肢を選ぶべきである」という前提があるからです。最終的に何かの選択肢を選んで、欠点が見えてきたときには、また欠点に注目して不満を抱え、他の選択肢が魅力的に見えてしまう……これを繰り返してしまう可能性があるのです。
いずれにせよ「どれが最高の選択肢か」という問題に唯一絶対の答えはないことが多く、意思決定を行うプロセスのどの時点でその選択肢を自分で受け容れるか次第とも言えます。
そしてどんなにたくさん選択肢があっても、一生懸命選んだ後は自分の選択に自信を持ち「比較モード」から「創造モード」に考えを切り替えていきましょう。
最高の選択肢を選ぼうという考え方ではなく、「選んだ選択肢を最高にしよう」というマインドセットが、自分の人生に責任を持ち人を幸せにする考え方なのかもしれません。
バリー シュワルツ なぜ選ぶたびに後悔するのか―「選択の自由」の落とし穴
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