更新日 2024年08月21日 | カテゴリ: ストレスに対処したい
佐藤さんは、「A」は三角形だと言いました。
田中さんは、「A」は四角形だと言いました。
この二人の発言を見て、どう思いましたか?「どちらかが嘘をついている」あるいは「どちらかが間違った認識を持っている」と思ったのではないでしょうか。
本当は三角形と四角形どちらなんだろう?佐藤さんと田中さんのどちらが正しいのだろう?どんな質問をすれば、本当のことがわかるのだろう?と想像したかもしれません。
ふたつの対立するように見える事象を見ると、人は自動的に「本当はどっち?」「正しいのはどっち?」「どっちを選べばいい?」と考えてしまいがちです。
インターネットで見られる論争も、殆どがこの構図ですね。例えば「タトゥーを入れている人を入浴拒否するのは問題である」と言う発言を誰かがしたときに「この文化的文脈でタトゥーを入れるほうが悪い」「許可すると問題が起きる」などと炎上する、というのはよく見られる事例です。
この場合、「タトゥーを入れている人を入浴拒否すべきか、しないべきか」という二択になってしまっていることが、非生産的な議論の背景になっています。
入浴賛成派の「タトゥーを入れているからと言って危ない人だとは限らない。正当にタトゥーを入れている人の権利侵害である」というロジックと、入浴反対派の「確率論的に言えば危ない人である可能性が高いし、それがこの国の慣習だったのだから、タトゥーを入れている人は受け容れるべき」というロジックはどちらが正しいのでしょうか?
実は、この問いかけ自体が、この議論を袋小路に押しやります。
賛成派は自分が正しいと思っているから、折れない。反対派も自分が正しいと思っているから、折れない。そうなると、「あいつはいつも頑固だ」とか「レベルが低い」とか「お前の母ちゃんでべそ」とか、そもそも本来の議論とは全く関係のないロジックでお互いを傷つけ始めます。
さて、ここで佐藤さんと田中さんの話に戻りましょう。
佐藤さんは「三角形」と言い田中さんは「四角形」と言った物体Aは、実は四角錐だったらどうでしょうか。
横から見た佐藤さんは「三角形」と言い、上から見た田中さんは「四角形」と言った。つまり二人とも正しかったのです。ここで「三角形か、四角形か」という議論は全く意味がなかったことがわかります。お互いの視点を確認することで、物体Aのより立体的な姿が見えてきたのです。
タトゥーの議論にしても、賛成派・反対派ともに間違ったことは言っていません。だからこそ、両方の視点を組み合わせて「タトゥーを入れているからと言って危ないとは限らないけど、危ない人を排除する必要性はあるから、タトゥーではない判断基準で「危ない人」であるということを高い確率で特定できる基準を作ることができないか、検討していく」といったより生産的で精緻な方向性で議論を進めていくことができるはずです。
これが、弁証法的な考え方です。
テーゼ(三角形)とアンチテーゼ(四角形)の異なる視点を統合してジンテーゼ(四角錐)を生み出して行くことを「アウフヘーベン」といいます。なんとなくかっこいいですね。
人生においては、葛藤の場面が多くあります。
「これもやりたいけど、あれもやりたい」
「これを達成したいけど、我慢はしたくない」
「あれもやりたくないし、これもやりたくない」
「自分はこう思っているのに、あの人はこうだと言っている」
「こんな価値観を持っているけど、あんな価値観も持っている」
こんな葛藤にぶちあたる都度、「どちらを選ぶべきか?」と悩んでいると、どちらかを選ぶたびにどちらかを諦めなければならなくあなってしまいます。ほかにも、自分の考えを通すために他人を攻撃したり、否定したりしなければならないのも辛いですね。
そうではなくて「どちらも選ぶとしたらどんな選択肢がありうるか」「ふたりとも正しいとすればどんな結論が生み出されるか」と考えると、より立体的な全体像が見えてくることがあるのです。
「社会貢献できる仕事につきたい」でも「お金になる仕事もしたい」と、社会貢献ができるNPOで働くのかお金になる商社で働くのか、という問題設定をしてしまうと、どちらかを選んだあとで「やっぱりあっちを選べばよかった」と後悔してしまうかもしれません。
そこで、例えば「社会貢献をしながらお金になる仕事をしたい」と、商社の中で社会貢献に携わることができる部門の可能性を探ることができます。そうすれば「どちらかの選択を諦めた」という考えに囚われることもなくなるのです。
どうやったらAもBも両立するような方法に高められるのかを考えていくことで、新しい視点が積み重なっていき、人生における選択がどんどん高次に、精緻になっていくはずです。
葛藤は、それがなかったら生まれていなかったであろう新しい視点や決着点に出会うチャンスです。
ですから、葛藤が起こったら逃げたり不安になったりするのではなく、ここぞとばかりにしっかり向き合って、自分を成長させる機会と捉えるのが良いのかもしれません。
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