更新日 2024年08月25日 | カテゴリ: 子育て・家族関係
2013年に発売され、第11回開高健ノンフィクション賞を受賞し、話題になった本があります。
フリーライターの黒川祥子さんによる「誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち」。
「子供の虐待」を巡る当事者や支援者達の日常から、マスコミの報道だけでは浮かび上がってこない深刻な社会問題を伝えています。
子育てに関することで、「愛着」という言葉をよく耳にしませんか?
英国の心理学者 ジョン・ボウルビィ提唱の「愛着理論」が発端で、その主要な概念である「幼児期における母子の心の繋がりの重要性」は、現在でも広く受け入れられています。
養育者との愛着形成の歪(いびつ)さが、子供の成長過程と社会生活にいかに深刻な影を落とすか、「誕生日を知らない女の子」を読むと、その影響の苛烈さに身震いするほどです。
しかし、苦しみを知っているからこそ、何気ない日常の幸せの大切さに気付く事もあります。
また、抱える愛着障害を創造的な力に変える作家や芸術家も多く、アダルト・チルドレンだった過去を告白したビル・クリントン元大統領など、政治家として活躍した例もあり、苦しみをプラスに昇華させる事も不可能ではありません。
子供の可能性の芽が、家庭の問題で全て摘まれてしまわぬ様、社会支援体制も進化していくのではないかと思います。
この本では、虐待の連鎖の問題にも触れています。
完璧な人間はいないように、完璧な家庭というものも存在しないので、家族に端を発する苦悩を抱えている人は多く、その種が尽きる事はないのだろうと思います。
「家族の問題は、家族で解決しなければならない」
「自分が、○○を一生守っていかねばならない」
など、必要以上に責任を抱えこんで、家庭を狭い檻にしてしまっていませんか?
もっと広く、外に目を向けてみて下さい。世界には、あなたの知らない事がたくさんあり、日々、刻々と変化していっています。
あなたや家族の苦悩に手を差し伸べる人や支援してくれる社会システムを見逃していたら、もったいないですよね。
この本でも、温かな里親や、様々な取り組みをしている養護施設、障害児の治療施設など、真摯に家族の問題に向き合ってくれる場所もある事を教えてくれています。
社会も、家庭も、個人も、完璧ではないけれど、だからこそ、様々な可能性に満ちているとも言えます。
広く世界に助けを求め、社会によって家族や個人が支えられ、家族や個人として社会に貢献していけたら、少し位歪でも、その凹凸に味のある素晴らしい人生になるのではないでしょうか。
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