「うつはかさぶたみたいなもの」カウンセラーの言葉の数々が今の道しるべに【体験談】

更新日 2024年08月25日 | カテゴリ: 体験談

今回は、仕事に忙殺される日々の中自分が責任者を務めていたプロジェクトで仲間を失ってしまったという辛い体験から、うつ病を経験した40代の男性、鈴木さんのお話です。カウンセラーの先生にもらった2つのアドバイスが今でも心の指針になっているそうです。

「変化があった」と言われたことが励みになった

ーカウンセリングを受けられた経緯を教えていただけますか?


鈴木:当時、会社で抱えていた仕事の山が重なったり、苦楽を共にした仲間を病気で失ったりということが続き、気がついたら限界を超えていたようで、いわゆるうつ病になってしまったんです。そこで会社と提携していた県内のカウンセリングルームに電話をしてカウンセリングを受け始めました。実は、最初の数回は話を聞いてもらうだけという状態で、これは何の意味があるんだろうと思ってしまいました。

でも、回数を重ねてカウンセラーの先生と話をしていく中で、話が整理されていく感覚があったし、先生から変化があったと言ってもらえることが嬉しいと思うようになりました。この先生が変わってきたと言うんだったら、もう少し行ってみようかなという心境だったと思います。

今、振り返ると、カウンセラーの先生は病気についてもたくさんのケースをご存知で、知見もあります。そして、あまり断定はしないけれど後押しをしてくれる姿勢が支えになっていたんだと思います。

「うつというのは、かさぶたみたいなもの」

鈴木:カウンセリングを受け始めて2か月ほど経って休職をしたんですが、当時は希死念慮が強く出てしまったり、気持ちの方のダメージが強くて波があったりしました。そんな気持ちをカウンセラーさんにお話していました。

その時にカウンセラーさんが言ってくれたアドバイスが今でも心に残っています。「うつというのはあなたの表面にかさぶたみたいに張り付いてるようなものだから、それを少しずつ剥いでいけば徐々に元に戻れる」という言葉です。

当時は、気持ちの落ち込みも激しかったので、治るんだよっていう意味を込められたかさぶたの話が自分の中で光のようになっていました。

ーカウンセリングを続けて良くなっている実感はありましたか?


鈴木:はい。会社を休んでから半年ぐらいした頃に、ちょっと前より良くなってるかなと感じました。カウンセラーの先生も「前より顔色が全然良いね」とか、「前はこう言ってたけど今は前向きな感じに変わりましたね」と言ってくれました。

かさぶた1

「再発の恐れに対処しながらうまく生きていきましょう」という言葉がアンカーになっている

鈴木:先生がかさぶたの話をされて少し経ってから、病気について本や体験談を読んで自分なりに勉強してみて、うつ病には再発が多いということが分かりました。

それをカウンセラーさんに話すと、「確かにうつ病は病気が良くなった後の再発がとても多い。それならば、再発の恐れに対処しながらうまく生きていくことを目標にしよう」と言葉をかけてくださったんです。

その言葉は、その後仕事に復帰してからも自分の中でアンカーみたいな役割をしてくれていました。例えば、お酒を飲むにしても、仕事をするにしても、心の片隅で再発が多いから気を付けようっていう感覚を持つようになりました。

病気の経緯を振り返る記録が自分の気持ちの整理になった

ーうつ病について本を読んだり勉強したりされていたということですが、他には何かうつ病と向き合う取り組みをされましたか?


鈴木:はい。1年ほど休職した後のリハビリ出勤の時に、自分がうつ病になった振り返りを会社のノートパソコンに打ち込んでいきました。これは、あるWEBサイトの「復職するためのステップ」という記事を参考にしました。

最初の頃はどんな状態で、どんな薬を飲んでどうなったのか、そしてカウンセリングでの気づきや医者に言われたことを記憶を辿ってまとめました。この振り返りは、自分の中の気持ちの整理になって、カウンセリングと同じような効果があったと思っています。

かさぶた2

うつの再発は怖いけれど、今ここにいることが前よりリアルに感じられるようになった

ーカウンセリングはいつまで続けられたんですか?


鈴木:休職をしていた1年と復帰してから数か月で、期間にすると全部で約1年半くらいだと思います。

ーカウンセリングが終わったきっかけは何だったのでしょうか?


鈴木:毎回カウンセリングの最後に1か月後の予約をしていたんですが、ある時、「この先は先生なしでも大丈夫だな」って思ったんです。結果的に、その次の回で終わりになりました。カウンセラーの先生には本当に感謝しています。

今もうつ病の再発が怖くないか怖いかって聞かれたら怖いです。でも、ある程度気をつけることは出来るけど、なっちゃったらどうしようもないと思うんです。今自分はここにいて、この先がどうなるのかなんて誰も分からない。分からないけど、今はとりあえずここに地面があって立っているっていうことが、前よりちょっとだけリアルに感じているんです。

病気で苦しみながら仕事をしている時も、休職中も、そしてリハビリ出勤中も、明日どうなっているか分からなかったので「また明日」って言えなかったんです。けれど今では、明日目が覚めて元気なら来ればいいんだみたいな割り切り感があります。

ちょっと変な話なんですが、病気になって失ったものは多いですが、失ったばかりじゃないなって今は思っています。ある本で「この病気は、学ぶべきものを学び終えた時に治る」という言葉を見つけたんです。これがまさに、カウセラーさんから言ってもらった言葉だったり、リハビリ出勤中に書いた病気の振り返りだったのかなと思っています。そして、「今ここ」という実感が、学んだことの一つかなという気がしています。

***


現在、鈴木さんは職場復帰し、ご自身の希望で社内の福利厚生を担当する部署に異動。今後は、もう自分と同じような人が出てこないよう、働く上でのストレス対処法、病気との向き合い方などの普及をしていきたいと話されていました。真摯に病気のこと、ご自身のこと、お仕事のことをお話しされる様子がとても印象的でした。ありがとうございました。

※この体験談はプライバシーの観点から、地名、個人名などの固有名詞は変更してあります。
(聞き手・文章 小西慧子)

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