更新日 2024年08月23日 | カテゴリ: うつ病・憂うつな気分
うつ病の治療法には、大きく分けて2つの方法があります。
一つは薬によって、うつ病の原因とされている神経伝達物質を増加させることで症状を軽くしていく、薬物療法。もう一つは、心理療法、いわゆるカウンセリング療法です。
今回は薬物療法で用いられる薬と心理療法で用いられる手法を紹介し、それぞれのメリット・デメリットを確認していきます。
うつ病の薬物治療で用いられる主な薬を紹介します。
抗うつ剤は、うつ病の時に脳内で減少している神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンを増やすことで、神経の働きを活発にし、沈んでいた気持ちを持ち上げる薬です。
中等症から重症のうつ病の場合、初診時に気持ちが沈んで何も話ができないことがあるため、まずは薬物療法である程度症状を改善させてから、カウンセリング等につなげていくわけです。
現在では、昔からの抗うつ薬に加えて、SSRI、SNRI、ミルタザピンという、新しい抗うつ薬も発売されています。
しかし、残念ながら抗うつ薬には副作用があります。
服用を続けていれば1~2週間で軽減してくることが多いですが、服用開始当初は、吐き気、めまい、眠気などが多くみられます。
また薬によっては、内服を継続することで不整脈を誘発するものや、内服継続により体重が増加するものがあります。
副作用が強ければ継続して内服することが難しくなりますが、主作用(抗うつ作用)が十分認められるのであれば、副作用による症状を取るための薬を内服することも可能です。
抗不安薬は、内服することで不安を直ちに取り除く薬です。
うつ病では強い不安によって、動悸、過呼吸、不眠などの不安症状が現れることがあります。
不安症状は、さらに不安を増大させ、うつ病も重症化させる可能性があります。
その際に、一時的に不安を取り除くのために用いられるのが抗不安薬です。
抗うつ薬にも、これらの不安症状を解消する力がありますが、効果を発揮するまでの時間に差があります。
使い方が上手になれば、突然の不安症状(不安発作)を起こさないようにコントロールすることも可能です。
しかし、抗不安薬は薬に即効性がある分「薬を飲めば楽になる」という薬への依存が形成されやすい、という問題点があります。
ですから、抗不安薬の使用は最初期に限り、長期使用は避けられる傾向にあります。
主に躁うつ病で使われる薬です。イライラや、気分の異常な高揚を抑えます。
うつ病に見える病気の中で、抗うつ薬でなかなか改善しない症状にはてんかん発作が関与している可能性があることから、抗てんかん薬に分類される薬が使用されています。
気分安定薬を使用することで気分の上がり下がりが減り、症状が軽減することがあります。
ただし、服用により眠気が出たり、急に増量することでアレルギー反応が強く出たりすることがあり、内服量の調整に注意する必要があります。
薬は、とりあえず症状を抑える、症状を軽くするためには非常に有効なものが多区ありまし。しかし、薬で治療するにも限界があり、不安の根を摘み取ったりなど、心の調整の必要があります。
そのためにカウンセリングは有効な手段です。
薬物療法とは別の方法でうつ病の治療をする場合、ストレスや不安を解消することが必要となります。
そのために休養を取ったり、自分の好きなことをしたりして気分転換をすることも必要ですが、それだけではなく、自分がストレスに感じていることを外に出すこと、誰かに話すことも重要です。
誰かに話をすることで、自分の中で問題点が明らかになり、自分が乗り越えるべきこと、自分がコントロールするべきことがはっきりします。
また、誰かに話すことで気分がすっきりして、それだけでも気分がよくなることもあります。
カウンセリングでは、お話をよく伺わせていただくと同時に、問題解決のお手伝いをします。
緊張する原因がどこにあるか、その原因をどのようにとらえているか、ということを明らかにし、その問題が感情や行動にどのように影響しているかを考える療法です。
人の、ある物事に対する認知の仕方は、その人の感情や行動に影響を与えます。
その物事に対して、大きな緊張を抱いたり、嫌悪感を抱いたりすると、その物事に対して正常な判断ができず、極端な考え方が生じます。
そういった極端な考え方の正体を探り、認知の歪みを正し、必要以上の緊張感、ストレスを感じることを少なくしていくのが認知行動療法の目的です。
考え方を柔軟にし、物事を幅広くとらえることができるようになれば、自分で問題に対処することが楽にできるようになり、気分が悪くなることも減ります。
認知行動療法は、うつ病の治療、再発防止に有効であるといわれています。
しかし、話もできないくらい気持ちが落ち着かなかったり、落ち込んでいたりするなど、重い症状がみられるときには、難しいでしょう。
ですから、薬物療法で少し状態をよくしてから用いるべき方法といえます。
逆に、軽症のうつ病であれば、この方法だけでも改善していく可能性があります。
その人が持つ社会的役割がストレスになって、うつ病を発症することも少なくありません。
対人関係療法はうつ病の原因になった人間関係(会社やそのほかの人間関係)と症状との関連を理解して、対人関係の問題に対処できる力をつける療法です。
人間関係の問題が明らかになり自分で対処できるようになれば、うつ病の症状が緩和される場合があります。
その他にも多数の心理療法がありますが、総じて言えるデメリットは「全員ができるわけではない」ということかもしれません。
もともと対人恐怖がある場合、カウンセリングがストレスとなってしまうこともあるからです。
カウンセリングを受けることがストレスになってしまえば、治療どころではありません。そういった場合は、無理してカウンセリングを受ける必要はないでしょう。
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他にも、うつ病の治療法はありますが、重症のうつ病に用いられることが多い手法ですので、今回は触れません。
薬物療法だけでも、カウンセリングだけでも、なかなか治りにくいのがうつ病です。
その時々の状況や、メリット・デメリットを鑑みて、治療法をうまく選択していくことが大切だと言えるでしょう。
参考文献
・American Psychiatric Association(2003)『DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引』高橋三郎・他訳,医学書院
・日本うつ病学会(2016)『うつ病治療ガイドライン』医学書院
・公益社団法人日本精神神経学会|井上猛先生に「抗うつ薬とうつ病の治療法」を訊く
・中村純(2005)「うつ病の薬物治療」,『うつ病』(第129回日本医学会シンポジウム記録集),pp52-56,日本医学会
・平木典子(2004)『新版 カウンセリングの話』朝日新聞社
・中河原通夫・久保田正春(2008)『抗うつ薬を飲む前に:その薬であなたの「うつ」は治るのか?』法研
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