更新日 2024年08月25日 | カテゴリ: 専門家インタビュー
成城カウンセリングオフィスで代表を務められ、大妻女子大学人間関係学部・大学院人間文化研究科教授として研究もされている福島先生は、ご自身で体系化された温泉モデル(仮称)に基づく統合的心理療法の観点から、相談者と向き合われています。その「温泉モデル」とはどういったものなのか、また大学教授でありながらカウンセリングオフィスの現場を持つ立場から感じられている昨今のカウンセリング業界の変化について、お話を伺いました。
私自身は元々「箱庭療法」や「夢分析」といった手法が得意なのですが、相談者の状態や傾向に合わせて、統合的心理療法と呼ばれるものの中でも「温泉モデル」と私が命名したモデルをベースにして、カウンセリングを進めています。
うつ病ひとつとっても、認知行動療法、対人関係療法、分析的心理療法など、様々なアプローチがあります。それぞれの心理療法に一長一短があって、一概にひとりの相談者にひとつの心理療法を当てはめるのは確かに難しい。
例えばうつ病の患者さんであっても、憂うつさが強いときに「認知行動療法(著者注:うつ病の治療にエビデンスのある心理療法の一種)をやりましょう」と言っても「治ったらやります」と言われてしまうこともままあります。エネルギーを消耗しますからね。同じ相談者の同じ問題であっても、そのフェーズによって、活用すべき心理療法は異なります。それを体系化したものが統合的心理療法とも言えます。
日本のカウンセラーの76%は「折衷的」心理療法を自称しています。ただ、この殆どが「どの心理療法も極めてはいなくて自信はありません、全部少しずつかじった程度です」というのが現実かもしれません。きちんとトレーニングを受けた心理療法家は非常に少ない。そんな中で、きちんと体系化した統合的心理療法を、実践として提供するとともに、心理療法家を育成することに力を注いでいます。
図1を使いながら説明しますと、横軸が相談者の特性(イメージ力が強い人、ことばでの思考が強い人、感情が優位になっている人)、縦軸が我々カウンセラーの覚悟と実力になります。
一般的なカウンセリングにあたる「傾聴・共感」が出来ることは大前提とし、そこで得た情報を元に、お客様に合わせて「箱庭療法」や「転移解釈」を中心とした精神分析的心理療法などの心理療法や接し方を決めていく流れとなりますね。
ただし、お客様に合わせてどの心理療法を選択するのか?どういう態度で接していくのか?という見立ては、カウンセラーの経験と最新のデータの両者に裏打ちされる技術です。
お客様を見立てる上で、基本となる目安を図2にまとめました。横軸はお客様の内省力の高低、縦軸はお客様の変化への動機付けの有無を示しています。これらは、基本的態度を微調整しながら、お客様がどこに当てはまるのかを見ていきます。
また、これに加えて、もう一つ目安があります。それが図3です。お客様の潜在的なスピリチュアリティの志向性に合わせて、見立てていく事が求められます。
左下のゾーンは「目の前の現実を大切にする」という志向性が強く、私も基本的にはこの志向性を多く活用し、心理療法を行っていますね。
私がカウンセリングを始めた80年代は、カウンセリングというのは「相談でお金をとるのはけしからん事」という認識が根強く、カウンセリングをする側も、受ける側も強い抵抗感を持ってました。カウンセリング契約書などを取り交わすというのも、とても違和感が強く、カウンセリングを始めるにも高いハードルがあった為、普及しづらい世相でしたね。
しかし、カウンセリングを正しく広めていくためには、『しっかりと対価を頂きカウンセラーのスキルの向上に務める必要がある』と私の師匠の一人である京大名誉教授の河合隼雄(かわい はやお)先生に教えられ、この道を極めていこうと心に誓いました。
そんな中、急激にカウンセリングが普及した時期がありました。それは、95年の阪神淡路大震災とオウム事件です。阪神淡路大震災後、私を含めた臨床心理士がすぐに現地入りしました。
元々うつ病に罹っていた方や、震災で心に傷を負った方々の話を聞きながら懸命にケアをさせて頂きましたね。印象的だったのが、被災者の方々と一緒にバスに乗っている時にお互い疲れている最中、これからの不安や不満を聞いているだけで「心が軽くなった」などの言葉を頂けたことでしょうか。その後も避難所に泊まりこんでカウンセリングにあたりました。カウンセリングを受けることに対するハードルが下がった、という意味では大きなキッカケだったのかもしれません。その頃と比べると、今は堂々とカウンセリングに来られる方が増えたように思いますよ。
2000年代に入ると、カウンセリングに対するイメージというより、カウンセリングに来られる方々に、ある特徴が見られるようになりました。以前と比較して、「内省力」が弱い方々が増えてきた印象ですね。情報化社会に伴い、考える間もなくインターネットで調べて答えがわかるような環境が、自己の内面を深く掘り下げない現象を生んでいるんだと考えています。カウンセリングで用いる「箱庭療法」や「夢分析」をしても、イメージが湧かずにそのようなやり方を止めてしまう方も増えてきており、時代の流れを感じますね。
カウンセリングを提供する場所が増えてきて、今では電話やオンラインでもカウンセリングを提供されている方々や会社も増えていきました。これからは、お客様が定期的な「自己点検」「自己投資」と位置付けてカウンセリングを活用されるケースが増えてくるでしょう。
それに伴い、カウンセラーに求められる経験や知識、技術の水準は上がって然るべきだと考えています。故に、カウンセラーを職業とされている方や、これから目指す方々には常に向上心とプロ意識を持って勉学・研究・臨床にあたってほしいと願っています。
私個人は、以前から本法案に賛成の立場をとっていました。この法案についての議論は、長らく様々な業界で話し合われて来たことで、今回法案を通せなければ次は20年後になるだろう、と言われていたこともあり今回可決したことに対しては、安堵しています。
さて、この資格が導入されることでの影響ですが、心理職に関して言えば収入には変化は殆ど無いでしょう。しかし、国家資格となったことで、就業先は増えると予想しています。デイケアや訪問看護サービスにて公認心理師がカウンセリングしても保険点数がつくなど、多少優遇されるようにはなるでしょうね。
しかし、国家資格となることで、カウンセリングを必要とする側の期待値は今よりも上がることは確かでしょう。故に、今の臨床心理士の知識や見識以上の専門性を求められるように思います。
臨床心理士も公認心理師も修士課程修了で受験資格が得られるわけですが、ゆくゆくは臨床心理士に関しては博士課程修了を基本要件とする、そしてどちらの資格も一定期間のスーパービジョンを義務付ける、など一定のレベルを担保できるような仕組みにしていくことが望ましいと考えています。そういった整備がなされれば、カウンセリングを必要とする方々に対して、良いカウンセリングを届けることが出来る土壌となるのではないでしょうか。
一般論で言うのであれば、大学病院や大きな病院はあまりオススメできないケースが多いかもしれません。主治医の交代が多く、治療方針が一貫しにくかったり、本当に必要かどうかわからない心理検査をしたりする場合も多い、という事が理由です。
また、中小規模の病院、個人のカウンセリングルームなどに関して言えば、院長・カウンセラーの実名がHPに掲載されていない、顔写真が無い、病院やカウンセリングの理念が熱すぎずに理性的に書かれている(理念が熱すぎるところは、内実が伴っていなかったり、反対に理念のために患者を使うという考え方が強い印象です)、カウンセラーが執筆や講演で忙しすぎない(患者に向き合うよりも、名誉欲などを優先している可能性が高いため)ことでしょうか。
また、実際にカウンセリングを受ける時でいえば、カウンセラーに対して、とくにカウンセリングの方針や見立てについて質問や反論をしたときに、どれくらいしっかりと返答・回答してくれるのかが大切でしょう。質問や反論をスルーしたり、ムッとする表情を見せたりするようなら、即止めるべきだと思います。
この様な状況だからこそ、私含め、カウンセラー一人一人が確かな技術と経験・豊富な知識・プロとしての自覚を持ち、カウンセリングにあたる必要があるのだと思います。
また、カウンセリングは自己点検・自己投資のチャンスです。お金や時間、エネルギーをかけてでも受けることをおすすめしたいですね。医療とは異なる、前向きな性質や役割を持った場として活用してほしいと考えています。
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