「うつ病は心の風邪」ってホント?うつ病についてのよくある「誤解」とは

更新日 2024年08月21日 | カテゴリ: うつ病・憂うつな気分

2010年代に入り、うつ病などの気分障害を訴えて病院を訪れる人が100万人以上となっている現代の日本社会。
「うつ病は心の風邪である」--そんな言い方をされることも増えました。
確かにこの言い方がうつ病に対してのハードルを下げている点も多々あります。
しかし、「風邪」という言葉によって誤った理解が深まっているのも事実です。
ここでは、うつ病について散見される「誤解」について紹介していきます。

誤解1. うつ病も風邪のように2~3日で治る?

「風邪」に喩えられることの最も大きな問題点のひとつは、「風邪ならばすぐに治るだろう」という思い込みでしょう。
多くの場合、風邪の症状は2~3日でおさまりますし、少々こじらせても1週間程度で完治することが多いですよね。
しかし「うつ病」は残念ながら、1週間、1ヶ月程度で完治するというものではありません。

この寛解までの時間という認識のズレは、周囲だけでなくうつ病にかかった本人にも散見されてます。
例えば1ヶ月程度専門医にかかり、症状が穏やかになったことで「治った」と思い込んで治療や休養を中止し、社会活動への復帰を急いでしまう人も少なくないのです。
無理を重ねてはさらに症状を重くして、休養をするだけで十分だったはずの療法が薬物療法を必要とするものと進んでしまったり、自分では病院にも行けない状態へとなってしまうこともあります。

誤解2. 風邪のように寝ていれば治る、専門医の治療は必要ない?

「風邪は寝ていれば治るのだから、うつ病も同じはず」-- これも大きな誤解のひとつです。
そもそも「風邪」という病気はなく、熱・のどの傷みなどの風邪の諸症状を抑えるためには体の免疫力を上げることが必要であるため、休養を取ることが最も効果的であるとされています。

そのため、多くの人は風邪をひいても内科医などの専門医にかかることは少なめです。
自宅で市販薬などを飲み、休養をしている人が多いことでしょう。

確かに「うつ病」についても心身の休養を必要とするのは風邪と同じです。
しかし「心の病」であるうつ病は、身体のように「寝ているだけで自動的に回復を遂げるもの」とは限りません。

症状によっては、脳の神経伝達物質の分泌をコントロールするため、SSRIなどの抗うつ剤を使用することもあります。
また現在の状況、心の問題をチェックする専門のカウンセラーと話をして、解決の糸口とすることも少なくないのです。
休養療法・薬物療法・カウンセリングの比率などには個人差がありますが、いずれにしても専門家のチェックが必要となることには変わりはありません。

誤解3. 病気になった原因を見極め、その問題を解決すれば治る?

風邪の場合、風邪をひく原因はさまざまですね。
気温が低い場所に長くいたり、空気が乾燥した場所に居たり、はたまた自分の免疫力が低下していただけ、ということもあります。
そして「そういえば…」と思い当たる原因があれば、治療の際には室温を適度に保ったり、空気を湿潤させたりと、それ以上症状が重くならない対処をするものです。

うつ病の場合にも、問題点の見極めは確かに大切ではあります。
しかし、例えば発端と考えられるのが「職場」や「家庭」であった場合、「そこから離れてしまえば治る」と短絡的に考えるのは危険です。

確かに、例えば業務が忙しいようであれば、しばらく休養を取ることが重要とはなるでしょう。
ただ安易に「離職」「離婚」と言った結論に飛びつき、それさえクリアすれば完治するのだ、と本人や周囲が考えてしまうケースは非常に多いのです。

特にうつ病を現在患っている人の場合、マイナスの自動思考にとらわれるあまり「配偶者は自分と居ない方が負担にならないだろう」「企業は自分を必要とはしないだろう」等と考え、家庭や職場から自らを切り離そうとする決断を下してしまうこともあります。
このような重大な決断は、うつ病にかかっている間こそ避けるべきものなのです。

風邪とうつ病の数少ない共通点とは

上記のように「心の風邪」とは言いがたい点が多いうつ病ですが、数少ない共通点も存在します。
そのひとつは、「誰もがかかる可能性がある」という点です。
今でも「うつ病とは、心の弱い人がかかるものである」という誤解を持っている人は少なくありません。
またそのような解釈があるゆえに、自分がうつ病であることを認めたくないと考えて専門医やカウンセラーにかかりたがらない人も多いのです。

しかし、この点についてはまさに「風邪」と同じと考えて欲しいところ。
風邪をひいた人に対して、「体が弱いからだ」と言う人がいるでしょうか?

そしてもうひとつの共通点、それは「初期対応が大切である」という点です。
「風邪だから」と言って慢心をして、肺炎などの重い症状に進行する可能性はありますよね。
それと同様に、うつ病も「放っておけば治る」と言った扱いをすることが、病を重くすることに繋がるのです。
自分について、また家族について「ちょっとヘンだな」と感じたら、早めに専門医やカウンセラーを頼ってみましょう。

おわりに

うつ病については家族や周囲のみならず、本人も誤った「思い込み」をしていることが多いものです。 病気に対して先入観を捨て、専門家に頼ることが寛解への第一歩だと考えてみましょう。

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