理想と現実は違う?「叱らない育児」の難しさ

更新日 2024年08月25日 | カテゴリ: 子育て・家族関係

「叱らない育児」という言葉、ここ数年では非常によく聞くようになりましたね。
最近ではその是非について問われることも増えているようです。
しかし実際には、その「叱らない」という言葉ばかりが一人歩きをして、多くの人に誤解を与えていることも多い様子。
ここでは「叱らない育児」のそもそもの心理的目的や、その難しさなどについて紹介をしていきます。

1. 「叱らない」=「ダメと言わない」ではない

「叱らない育児」については、様々な教育者の方が提唱をされているようなので、もちろん内容に多少の差異はあることでしょう。
しかし多くの教育者・児童心理学者の方たちの発言を見ても、「叱らないこと=ダメなものは一切無し」と言っている人はほとんどいません。

良い箇所については「褒めて育てる」、そして治すべき箇所については時間をかけて「何故そうしたか」「何故いけないのか」を話し合う、このような考え方が「叱らない育児」の基本理念と言えます。

ところが、世間一般には「叱らない」という言葉のみが一人歩きをし、子供が欲求のままに行動を行ってもそれを止めないことを善とする親御さんも増えてしまっているようです。
「叱らない方が楽だ」「叱るのは学校や教育の場の役目だ」という「躾の放棄」へと情報が歪められてしまっていることもあります。

このような「一切注意を受けない子供達」は、人間が成長過程で得るべき「善悪の判断」を知らないままに大人になってしまうのです。

2. 子供は「善悪」を1歳から判断しはじめる

心理学的に見て、「叱らない育児」が提唱している「褒めること」はもちろん重要です。
また理不尽に怒られること、声を荒らげられることでの恐怖心による緊張感は一時的なものであり、子供の教育に対してあまり長期的な良い影響を及ぼさないことも判明しています。

とは言え、「ダメなものをダメということ」は心理学的に見ても大切なことです。
子供は1歳の頃から、自分の様々な動作に対して「親の反応」を見ています。

「ダメだよ」という態度を親が取ることで、「これはいけないことだ」と原始的に学習していくのです。
例えば公共のものを盗んだり、人をぶったりすることが「いけないこと」なのは当然ですね。
もしもそんなことを「やれ」と言われたら、私達は頭で考えるより先に、拒否反応を起こすもの。
これは実は赤ん坊の頃から親によって「何がいけないのか」を教わっているからなのです。

このことを心理学では「社会的参照」と呼んでいます。
子供の頃から一切「ダメなもの」を教わらなかった子供は、人を傷つけること、モノを盗むこと、店舗にあるものに触れることなど、様々なタブーに対して「良くないことだ」という概念がそもそも植え付けられません。
この「タブー」という概念ができない子供は、将来的に例えば反社会的行為・違法行為などについても「何がいけないのか」がわからないままに成長をしてしまうことになるのです。

3. 「叱らない育児」が徹底できるのかを考えてみよう

「叱らない育児」は、きちんと徹底することができれば児童心理学的な面から見ても子供に良い影響を与えるものではあります。
しかし「いけないものを一つ一つ諭していく」という重要なポイントを徹底できる親が、現代日本社会においてどれだけ存在しているのかという点にはやや疑問が生じるところです。

「子供が納得するまで話し合う」ということは、ひとつのタブーについて10分以上も時間をかけるということになります。
子供が興奮しているときなどは、30分以上の時間を要することもあるでしょう。
そして小さな子供が「いけないこと」をする回数と言えば、1日に10回、20回となることもあるはずです。
つまり、日々の生活の中で1日の300分、400分を子供との対話に費やすことになります。
同じ話を次の日、翌週などに繰り返すこともあるはずです。

このような親にとっての「大きな苦労」は、叱らない育児を語る上でほとんど指摘されていません。

「感情的にならず、1日のうち数時間を子どもと向き合うことに向けられるかどうか」
「叱らない育児」を成功させる形に導くためには、この点が非常に重要となるでしょう。

自分の生活スタイル、子供との関われる時間などが、はたして「本当の叱らない育児」に向いているのだろうか? この点はしっかりと確認をする必要があります。

おわりに

優しい親でありたい、怒らない親でありたいと言った「理想的な親の形」は、誰もが望むところではあります。
しかし子供の社会的参照を考えた上で、何も注意をしない親というのは、子供から善悪の判断を取り上げていることに他なりません。
口当たりの良い情報だけに踊らされることなく、「自分と子供のスタイルに本当に合った育児」を考えていきましょう。

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