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ソーシャルスキルトレーニングを職場に取り入れてストレスの少ない環境づくりを|田中 健吾

更新日 2016年12月15日 |
カテゴリ: 専門家インタビュー
ソーシャルスキルトレーニングを職場に取り入れてストレスの少ない環境づくりを|田中 健吾

ーー12月1日に導入されたストレスチェックについて、導入後の様子はどう感じられていらっしゃいますか?


法律が施行されたのが12月1日ですので、新たな仕組みの中で実際に運用されている企業事例は、まだ聞いておりません。 以前から既にストレスチェックを行っていた企業の産業保健スタッフが、学会等で運用面の留意事項や注意点について解説されている機会が増えているように思います。 また、メンタルヘルス研修やセミナーの依頼は増えていて、制度等を理解しようとする人事労務担当者が増加しているようです。

ーー職場での人間関係に高ストレスを感じている方が増えてきているようですが、その原因や背景にはあるものはなんなのでしょうか。


「コミュニケーションの希薄化」と「ハラスメントの増加」がストレスにつながり、メンタルヘルスを悪化させているようです。 職場でソーシャルサポート(以下サポート)がうまく構築できず、信頼関係が薄れていることが背景にあると考えられます。

職場の上司と肯定的なコミュニケーションを保ち、「職務内容に関することで誉められる」などのサポートを多く受けるとストレス反応が減少することや、会社内のサポートはストレス反応の低減にとって最重要であり、会社外や家族からのサポートが得られていても、会社内のサポートが不十分な場合にはストレス反応の悪化が認められやすいことなどが、多くの研究者や実務家から報告されています。

サポートがストレス反応を低減するのは、個人が職場で発生した様々なストレス要因に実際に対処する上で、サポートが役立つからです。 サポートネットワークを有していると、困ったときに実際に手助けしてくれたり、どうしたらいいか情報をくれたり、単に居てくれるだけで落ち着いて対処することができたりと、何らかの形でストレスへの対処可能性を高めてくれることになります。

こうしたサポートフルで円滑な職場の人間関係は、働く人がストレスに対処するための「資源」になるわけですが、この資源を確保するのためには、普段からのコミュニケーションのふり方、意思や感情の授受の仕方(=ソーシャルスキル)が必要です。 近年は、ソーシャルスキルをうまく育んでこなかった人が、職場に多くなっているのかも知れません。

これは、必ずしも本人に問題があるわけではなく、雇用形態や経営管理の変化の影響も多いのではないかと思います。 職場で親密な人間関係を形成するのに、旧来の日本型雇用形態(特に終身雇用)が有効だという考え方があります。 終身雇用の主目的は長期にわたって従業員のキャリア発達・能力開発を促進していくことにありますが、同時に互いが協力しあうサポートネットワークを構築することで、組織内のストレスを低減する効果もあると考えられています。 近年の不安定な雇用環境下では、コスト削減等の名目で日本型雇用形態を見直す動きが広がりましたが、それはサポートネットワークを弱めてしまい、働く人のストレス対処資源を奪うことにつながってしまったと考えることもできます。

また、厚生労働省が公表した平成26年度「過労死等の労災補償状況」(厚生労働省、2015)によると、仕事上の負担で精神障害を発症して労災請求された件数が1,456件と過去最多となっています。 この労災に係る負担の元となっている出来事の主要なものに、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が挙げられています。

この項目は、ここ数年常にトップ3位に挙がっています。 労働相談内容を見ても、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は3年連続トップです(「平成26年度個別労働紛争解決制度」;厚生労働省、2015)。

サポートが不足しているどころか、逆にハラスメントが増加しているという現状です。 ハラスメントについても、背景にはソーシャルスキルの問題があると思います。 業務遂行上で必要な命令や正当な注意・叱責と、単なる怒りにまかせた罵倒の区別ができず、適切で効果的な意思疎通をするのに必要なソーシャルスキルが不足している上司が、部下をダメにしているのです。他者の気持ちを読み取り、多くの人々が一般的にどう受け止めるかに思いをはせ相当性のある対人対応をしてほしいところです。

ソーシャルスキルを育めなかった従業員と上司、サポートを可能にしづらい職場環境が複雑に組み合わさって、ストレスを感じる人を増加させているのではないでしょうか。

ーー職場ストレスとSSTにはどのような関連性があるのでしょうか?


SST(Social Skills Training)は、認知行動療法の1つに位置づけられている対人援助法で、主として人間関係にまつわる“術”=ソーシャルスキルを身に着ける方法です。 もちろん、職場でも様々な形で実践されています。

SSTは、個人・集団のいずれの形態でも実施することが可能であるという長所がありますが、効果が十分に発揮できるのは集団トレーニングであるといわれています。この点で、職場でのSSTは理にかなっています。 集団でのSSTには、以下にあげる利点があります.

1 ) 複数のモデルを呈示できる
2 ) 実践的リハーサルの機会が提供しやすい
3 )参加する他のメンバーからフィードバックを受けられる
4 ) 般化に都合のよい人的環境を整えられる
5 ) 一人一人実施するのに比べて効率的である

職場ぐるみで、ソーシャルスキルの不足している従業員とそうでない従業員とが、ともにトレーニング・プログラムに参加することで、身近にモデルとなる従業員がいるため、モデリングが促進されるといった利点があります。 一方、ソーシャルスキルが既に身についている人にとって、トレーニング内容が退屈で単調な作業と化しやすいため、参加への動機が乏しくなったり、逆にソーシャルスキル不足でトレーニングの必要な人からすれば、周囲にスキルフルで自分よりも圧倒的に適切で効果的なソーシャルスキルを発揮する人を目の当たりにし、自信を喪失してプログラムへの参加動機が弱まったりしやすいという危険性もあります。

こうした留意事項に配慮し、1 ) トレーニング・プログラムのペース配分を適正化、2 ) 取り上げるスキルの難易度の調整、3 ) 個人に応じた多様な強化子の準備、を行うと職場で効果的なSSTが実施できるでしょう.

職場の人間関係に悩む人たちをはじめ、組織生活の上で様々な困難を抱えるたくさんの人たちの自己対処能力を高め、ストレス対処を促進するために、SSTの活用が期待されます。

ーー職場ストレスを軽減するために、組織(経営者)として、従業員(個人)として取り組めることはありますか?


職場ストレスを軽減するには、個人による取り組みだけでは不十分で、「組織」自体を健康にする必要があります。 経営者は、「労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」ことが労働契約法に規定されており、労働契約に伴い信義則上当然に、組織は労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っています。 組織(経営者)に求められるのは、職場環境の評価と改善です。

職場環境の改善にあたっては、まず組織における管理監督者が、日々の観察や産業保健スタッフ等による職場巡視、あるいは従業員からの聴き取りなどによって、職場ごとのストレス要因の現状を知ることから始めます。

その上で、ストレス要因となっている可能性のある問題をできるだけ具体的にリストアップし、問題に対して、参加型のグループ討議などを行い、改善計画を立てます。厚生労働省が推奨する様々なツールが公開されていますので、それらを利用すると良いでしょう(例:「職場環境改善のためのヒント集」(メンタルヘルスアクションチェックリスト)、メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)など)。

改善計画に基づいて、職場環境改善を行うことでストレス要因を順次なくしていきます。
実施には、産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフだけでなく、職場の責任者や管理監督者、人事労務担当者など色々な立場の関係者があたります。 計画通りに実行されているか、実施上の問題が起こっていないかなどの進捗を定期的にチェックし、改善実施がかえって従業員に負担になっていたりしないか、円滑に推進されているかを継続的に観察する必要があります。 職場環境改善には、産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフだけでなく、職場の責任者の理解と協力が必要です。 管理職向けに職場環境等の評価と改善に関する教育研修などを事前に実施することが効果的です。

職場環境改善が完了したら、ストレス要因が本当に緩和されたかを評価します。 評価は、対策が計画通り実施されたかどうか、目標の指標が改善したかどうかの2側面から行います。
例えば改善実施の前後でストレスチェックの結果を比較するなどが考えられます。 職場環境改善は休職者の軽減などの形で効果が表れるには数年はかかるのが普通なので、目先の結果を求めすぎないで対策を継続していくことが重要です。

もちろん、組織の配慮と管理だけでは従業員の安全と健康は保証されないので、自己保健義務の観点から、セルフケアに務めることも求められます。セルフケアとは、従業員自らがストレスに気づき、これに対処するための知識や方法を学び、それを実際に行うことです。

知識として持っておきたいのは、なぜ自分が職場でストレスを感じているかについてプロセスについての知識です。
自分の心理的ストレス反応が引き起こされる原因を理解することは、「ストレスへの気づき」を促進することから、現在ストレス状態にある人にとっては、心理的ストレス反応を低減するきっかけを得る一種の治療的効果をもたらすことが期待できます.また、現在はストレスの問題を抱えていない人にとっても、心理的問題が発生する前にこうした知識を得ることで、今後職場ストレッサーに遭遇した際に自身が適切な対処を実行する準備状態が形成されるため、ストレス予防的効果が期待できます.

また、自分の対人関係を良好に保つ努力も重要です。
働く人のストレスの多くは、対人関係に端を発します。このところの経済動向は、あまり好調とは言えませんので、生産性が求められる勤労者にとっては、対人関係を良好に保つのに十分な心のエネルギーが枯渇しかかっているのかも知れません。 しかし、仕事をうまく処理していくうえで、最も基礎的なことは、職場の人間関係を円滑に保つことだと考えられます。仕事は一人で行うものではありません。企業組織の従業員は、上司や同僚、部下、顧客などの多様な人間関係の中で生きています。個人で仕事をしている人でさえ、その仕事に価値を与え、食いぶちに変えてくれる顧客やクライアントがいるはずです。働くということは、労働力を提供し、それに対する報酬を得ることが基盤ですから、誰かとコミュニケーションをとらないわけにはいかないのです。

職場において様々な人とコミュニケーションを上手くとっていくために、個々人がソーシャルスキル(=人付き合いの技術)を身に付けておくことが重要でしょう。

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