自分が切り替わる「スイッチ」をつくる−−条件づけとアンカリング
更新日 2016年12月19日 |カテゴリ: 習慣を変えたい

集中力を高めたい、感情を安定させたい、冷静になりたいなど、自分の状態を思い通りにコントロールできたら、素晴らしいと思いませんか?
実は、心理学の有名な研究にヒントがあります。ここでは、「条件づけ」のメカニズムと、それをどうセルフコントロールに活かすことができるかについて、考えていきましょう。
刺激と反応:無条件反射とは何か?
何らかの身体反応や行動をうながすもののことを心理学では「刺激」と呼びます。
このうち、例えば「食べ物を食べる(刺激)」と「唾液が出る(反応)」や、「熱いものを触る(刺激)」と「手を引っ込める(行動)」など、生き物が先天的に持っている反応を「無条件反射」といいます。
しかし、人間の刺激に対する反応は、先天的なものばかりではありません。
「パブロフの犬」とは?
心理学の有名な実験として、「パブロフの犬」のことをご存知な方は多いと思います。犬の口に肉を入れてあげるのと同時に、音叉の音を聞かせる、という実験です。
口の中に食べ物が入っていると、犬は私達人間とおなじく生き物ですから、食べようとして唾液が出てきます。
実験の中では、犬は口の中に肉が入ると、その瞬間に音叉の音を必ず聞かされます。これを何度か繰り返していると、犬は口の中に肉が入っていない状態でも、音叉を聞けば自然と唾液を出すようになってきます。
これが、有名な「条件反射」です。つまり、音叉(刺激)→唾液(反射)という反応が体に染み付いてしまっているのです。
この「音叉の音を聞くと唾液が出る」というのは、動物ならだれでも持っている生来的な行動ではありません。後天的にひもづけられるようになった反射のことを、条件反射と呼ぶのです。
人間の行動と条件反射
実は「条件反射」は人間にも見られる反応です。
「梅干し」という言葉を聞くとなぜだか口の中に唾液がたまって、同時にすっぱい感覚まで呼び起こされませんか?
実は「梅干し」という言葉が実際の梅干しの記憶とひもづけられていて、口の中に唾液をためさせる(条件反射)のです。
外国の方が「UMEBOSHI」と聞いても、食べたことがなければ口の中がすっぱくなることはないでしょう。梅干し=すっぱい=口の中に唾液がたまる、という経験をしてはじめて、「梅干し」という言葉が「唾液がたまる」と結びつけられます。
この刺激ー反応の結びつきを学習することを「条件付け」と呼びます。
条件づけをセルフコントロールに活かす「アンカリング」
条件づけのメカニズムは、Aという刺激(音)とBという反応(唾液)を同時に起こすことで、本来無関係であったはずのAという刺激とBという反応が結びつき、Aが起こると自然とBの反応が起こるということを学習することです。
これを活用して、セルフコントロールのために開発された手法が「アンカリング」といいます。
例えば、スポーツ選手は、試合前に決まったルーチンを行うことが多いですね。イチローが打席に立ったときには、必ず一歩を踏み出し、バットを突き出す仕草をするというのも、安定したパフォーマンスを得るためのアンカリングになっています。
自分を切り替える「スイッチ」をつくる
集中力を高めたい、緊張を落ち着かせたい、など、自分自身の感情をコントロールするために、何らかの「スイッチ」を作ってあげるのです。
いつも寝室に入ってもなかなか寝付けない人が、眠さがピークになる(反応)直前に、寝室に行く(刺激)ということを繰り返すと、「寝室に行く」と「眠たくなる」というアンカリングが起こります。「寝室」が「眠さ」と結びつき、入眠がスムーズになります。
集中力を高めたい場合には、自分で集中力が高まった状態をイメージし、そのピーク直前のタイミングに、何かアンカー(しるし)になる行動をします。例えば、左手をぐっと握る、耳を触るなど、普段あまりしない行動がいいでしょう。これを何度も繰り返すことで、「耳を触る」と「集中力が高まる」というリンクが出来上がります。
このように、「身に付けたい行動」と「切り替えのためのスイッチ」を決めて、その体験を繰り返すことで、次第に「スイッチ」が「行動」の発火を促していくことに気づくはずです。
おわりに
大切なことは、「自分で自分をコントロールする」という強い意志です。
「私、集中力ないんだよね」「緊張しやすいんだよね」と諦めるのではなく、自分で自分自身を条件づけして、コントロールしていくことが可能であることを理解することが、自分を変える第一歩になるのです。
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