企業メンタルヘルスケアの肝!「ラインケア」を正しく行うための3つの対策

更新日 2024年09月03日 | カテゴリ: 職場のメンタルヘルス

企業が行うべきメンタルヘルスケアは、大きく分けて4つに分類できます。 セルフケア、ラインケア、企業内保健スタッフによるケア、そして外部機関の活用です。

このうち企業内のメンタルヘルスケアを成功させる上で最も重要とされるのが「ラインケア」。 ラインケアとは管理者(上司・チームリーダー等)が部下の心の不調に早く気づいて相談を受け、適切な指導・対処を行うこと。

しかし企業内メンタルヘルス対策の中で、ラインケアがうまくいっていると回答した企業はいまだ少ないのが現状です。 ここではラインケアを正しく行うための3つの対策について解説をしていきます。

1. コミュニケーションスキルチェック

まずは現在の管理監督者と部下それぞれのコミュニケーション状態の確認を行います。 メンタルヘルスケア推進担当者(人事労務スタッフ等)が先導し、保健指導スタッフ(産業医・産業カウンセラー)等の指示を仰ぎながら、現行の上司・部下コミュニケーションのチェックを行っていきます。

チェックにおいては、以下のような点に注意していきましょう。

・信頼有る関係性が築けているか?
・部下が困った時には相談されているか?
・部下の心身の状態について把握できているか?
・日常業務の中でコミュニケーションを取る時間はどれほどあるか?
・管理監督者の繁忙状態はどの程度か?

現在のコミュニケーション状態を正確に把握するために、部下側の社員を対象とした匿名アンケート(コミュニケーション満足度調査)を行うのも手です。

コミュニケーションスキルチェック・アンケートチェックは1回で終わらせず、定期的な巡回・確認を行って状況を常に正確に把握するようにします。

2. 管理監督者の面談指導

コミュニケーションスキルチェックで改善が必要と見られた管理監督者に対しては、メンタルヘルスケア推進担当者による面談指導を行います。

ここで重要なのが「管理監督者の仕事能力とコミュニケーションスキルを同一視しない」という点です。 メンタルヘルスケア(ラインケア)の問題点として、有能プレーヤー型の管理監督者の存在が挙げられます。

管理監督者自身が有能でセルフケア能力が高い場合、ラインケアの重要性が認識できていないことも少なくありません。 また監督者自身が仕事ができる分、知識や経験が不足している部下に対する共感力が低い場合もあります。

・なぜラインケアが必要なのか?
・マネジメントスキルの重要性
・ラインケア不足による生産性の低下

以上のような点を重点に置きながら指導を行っていくことが大切です。 場合によっては産業医・産業カウンセラー等の保健指導スタッフが同席した形や、外部機関の専門家を招いた指導を行っても良いでしょう。

3. ラインケア研修の導入

労働安全衛生法の改正によりメンタルヘルスケア(特にラインケア)の義務化が定められたものの、現状において「ラインケアとは何か」「なぜラインケアをすべきなのか」という点を理解できている経営者・管理監督者はいまだ少ないのが現状です。

管理監督者ひとりひとりが正しい知識を持ち、実践的にラインケアを行っていくには、管理監督者(管理職)全員にラインケア研修を履修させるのが最も理想的です。

ラインケア研修としてはメンタルヘルス・マネジメント検定試験への合格を目指したもの(人事労務管理スタッフ、経営幹部向けのもの)のほか、よりシンプルで実践的な1日程度の研修(管理監督者全員向けのもの)を用意している機関もあります。

どのスタイルを選ぶべきかは企業規模にもよりますが、どのような規模であれ、1名ないし2名以上のメンタルヘルス・マネジメント受講者(ラインケア研修受講者)の存在は必須であると言えるでしょう。

おわりに

仕事でのストレスによる社員の心の不調・身体の不調をもっとも最初に感じ取れるのは、職場が同じである直接の管理監督者です。 また管理監督者が早期の相談を受け、産業医への相談、業務量の調整といった適切な処置を行えば、うつ病といった重い症状に至ることを未然に予防できます。

「ヘルスケア」というと、医師・看護師・カウンセラーといった専門家に任せるものという感覚を持つ人も少なくありませんが、企業内の「メンタルヘルスケア」においては、ラインケアを行う管理監督者ひとりひとりの意識の持ち方、知識の高さがカギとなってくるのです。 職場のメンタルヘルス環境を適切に整えるためにも、一刻も早いラインケア対策が必要となります。

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