更新日 2025年01月31日 | カテゴリ: 職場のメンタルヘルス
労災とは「労働者災害補償」の略称のこと。 名前のとおり勤務中の災害を補償する制度ですが、最近ではうつ病等の精神疾病・パワハラ・長時間残業といった問題が労災認定されるケースも増えてきています。 ここでは労災認定について、よくある疑問について解説していきましょう。
2011年、労災認定の認定基準が大幅に改正され、「心理的負荷による精神障害の認定基準」が明確に定められるようになりました。 ここでは以下のような精神障害(精神疾病)が業務による精神障害の発病として認められるようになっています。
・気分障害(感情障害)
・神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害
気分障害(感情障害)の最も代表的な存在が「うつ病」や「急性ストレス反応」です。 つまり「業務によってうつ病を発症した」という場合、労災認定される可能性が以前に比べて高くなったのです。
労災認定設定基準では、精神障害の発病の原因となる強い心理的負担の度合いが三段階評価で行われます。 前述の認定基準の改正によって、パワハラ行為による心理的負担の度合いは、もっとも強い分類である「3」であると認められるようになりました。
・退職の強要
・恫喝
・暴行
・仕事の取り上げ
・嫌がらせ
・いじめ
上記のようなパワハラ行為があり、また企業側による改善の取り組みが無かったことで気分障害・感情障害等の精神障害を発病している場合、労災認定が降りる可能性は格段に高くなっています。 ただし「パワハラ単体」ではなく「パワハラによる精神障害の発病」を前提とした話である点には留意しておきましょう。
労政認定基準では、精神障害発病に至る原因として「長時間労働」も評価対象としています。
「極めて長い労働」と評価され発病に至る「特別な出来事」であり、心理的負担は強であると認められる可能性が高いです。
「発病に至る具体的な出来事」として「心理的負担が強である」認められる可能性が高いです。
例えば転勤・配置転換といった他の出来事と関連づいた場合には、心理的負担度が「強」であると認定される可能性があります。
うつ病等で労災認定を得る場合、労働者自身が労働基準監督署に申し出て認定を得る必要があります。 また、当然ですが「うつ病である」という自己申告のみで労災が降りるわけではありません。
以下の基準を満たすと労働基準監督署が認めた場合のみ、労災認定がおります。
申請時には主治医の診断書等を提出しますが、必要に応じては複数の医師の診断書が必要となるケースもあります。
業務内容等が労働基準監督署の調査によって詳しく調査されます。 心理負担度については当人の主観的判断だけでなく、同業種・同年齢・同程度の実績といった環境が似た人を調査し、ストレス状況の客観的な判断も行われます。
家庭環境、日常生活等のチェックで業務以外のストレス要因が無いかを確認されます。 また個体要因とは、既往歴や生育環境、社会適応性といった個人の元々持っている資質・体質です。
例えば元々アルコール依存症等の既往歴がある場合、就職後に「業務ストレスによる精神障害発症である」と訴えても認められないケースが多いです。
以上のような様々な側面から労災認定のチェックがされるため、労災認定が降りるまでには2ヶ月~6ヶ月程度かかる場合もあります。 またケースによっては労災認定がされない場合もあるので注意が必要です。
うつ病やパワハラで労災認定された場合、労働者自身は労災保険給付に加えて損害賠償を請求することができます。 この場合、多くは安全配慮義務違反(労働者の生命・健康に配慮すべき義務の違反)を争点とするケースが多いです。
しかしながら損害賠償請求をする場合、裁判では企業側の安全配慮義務違反の証拠をもう一度すべて提出する必要が出てきます。 また裁判の場においては損害額が請求通りにいかず、減額されるケースも多いのが現状です。
労災保険給付を既に受けている場合、給付金に応じた損害賠償額の減額調整が行われることが多くなっています。
うつ病・パワハラでの労災認定によって損害賠償を得られる事例も増えていはいますが、希望通りの損害賠償額が受け取れるという確約はありません。 労災認定された場合で損害賠償請求を起こしたい場合には、労災対応に強い弁護士・NPO機関等に相談をした方が良いでしょう。
労災認定をされるのは、会社にとってもデメリットが大きいもの。 そのため労災認定については会社側の強力が得られず、時間がかかるケースが少なくありません。 労災認定基準を満たしているのに企業側が認めずに大幅な時間を費やしたり、最悪の場合には労災認定が降りない可能性も考えられます。 万一のケースも考えて、よく考慮した上での申請をすることをおすすめします。
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