「過重労働」とは何時間勤務? 意外と知らない「長時間労働」の定義

更新日 2023年05月18日 | カテゴリ: 職場のメンタルヘルス

過労死の増加、長時間労働・過重労働による精神障害の増加等、現在の日本では「働き過ぎによる心身の健康被害」の問題がクローズアップされるようになっています。 2014年には厚生労働大臣を本部長とした「長時間労働削減推進本部」が設立され、官民一体となった長時間労働対策が本格的に始められました。

とは言え現在においても各企業における長時間労働対策はいまだ序盤の状況にあると言わざるをえない状態です。 また長時間労働の原因の究明・対策を行う前に、そもそも「長時間労働」に対しての情報が不足しているという点についても問題視されています。

ここでは長時間労働の定義問題や長時間労働に関わる基礎的な情報について解説を行っていきましょう。

1. 長時間労働とは何時間?

長時間労働とは何時間の労働を定義するのか? 何時間を超えたら長時間労働なのか? 実はこの「長時間労働」の基準については非常に曖昧な状態であり、ハッキリとした基準が定められていません。

そもそも労働基準法第32条では、勤務時間は一日8時間・一週間40時間と定めており、それ以外の労働は原則としては「無し」ということになっているのです。 ただし労働基準法第36条の定めによって時間外労働の限度時間に付いては、原則として「1ヶ月45時間以内」とされています。

労働者側・雇用者側の話し合いによって時間外労働OKということになれば、45時間以内ならば残業OKというわけですね。 また繁忙期・特殊事情有りの場合には上記限度時間を超過することも可能という特例が付加されています。 この他過労死についての判例等を加えていくと、以下のような3つのラインがあると考えて良いでしょう。

・月45時間以上の時間外労働(残業)がある場合、長時間労働であるとされる可能性は高まる ・月80時間以上の時間外労働が2~6ヶ月継続されている場合、法規を大幅に超えた長時間労働であると認定されやすい ・月100時間の時間外労働が前月にある場合、法規を大幅に超えた長時間労働と認定されやすい

2. 長時間労働者は産業医による面接指導が義務?

労働安全基準法第66条では『医師による面接指導制度』が定められ、長時間労働者で心身に疲労が見られる人は医師(産業医)による面談を受けさせることが義務付けられています。

この制度、2007年以前は従業員数常時50人未満の事業場(会社)については義務付けを猶予されていました。 しかし2008年の春の労働安全基準法法改正によって、従業員数・社員数常時50人未満の中小企業も産業医による面談の義務が適用されるようになっています。

面接指導の対象者となるのは、上記でご紹介した「月80時間/月100時間」といった長時間労働を行い疲労蓄積が見られたり、心身の健康に不安がある従業員・社員です。 またこれ以外での「1ヶ月45時間以上」「1ヶ月50時間以上」といった基準を会社で独自に規定し、面接指導を実施することもできます。

産業医がおらず長時間労働者がいても面接指導を受けることが難しい場合、各自治体の地域産業保健センター(産業保健総合支援センター地域窓口)を活用することも可能です。

3. 長時間労働による疲労はどうやって調べる?

「長時間労働による疲労の蓄積」と言われても、ある程度働けば疲労をするのは当然のことですよね。 知識の無い人が自分の疲労度を「心身に健康被害が及ぶ程度かも」と自己判断するには、どうしたらよいのでしょうか?

厚生労働省ではこの点が鑑みられ、過重労働者・長時間労働者向けの「疲労蓄積度判定チェックリスト」の作成・公開が行われています。

チェックリストは現在の自覚症状(メンタル面・身体面)及び現在の勤務状況を20問程度で確認するものです。 セルフチェック用のものと労働者の家族用のものが用意されているので、本人回答・家族回答の両方を合わせれば、より疲労蓄積度の判定がしやすくなるでしょう。 回答時間は3分~5分程度となっており、勤務中・休憩中などにも手軽にチェックを行えます。

時間外労働の時間数のみではなく、疲労蓄積の度合いも参照していくことで、例えば上記の産業医面談の自社基準等も作りやすくなっていくことでしょう。

おわりに

長時間労働の基準はいまだ曖昧な点も多く、その分長時間労働対策を行おうとしても急に「ノー残業」「残業ゼロ」といった現実的に難しい目標を掲げてしまう企業も少なくないのが現状です。 もちろん時間外労働ゼロであることが法律的に見ても理想ではありますが、実現不可能な目標を掲げて結果的に問題が解決できないのでは意味がありません。

まずは労働基準法ラインである「45時間」を目安に長時間労働対策を行っていくのも手です。 また、80時間~100時間超といった長時間労働が見られる場合にはいわゆる「過労死ライン」を超過する労働時間であり、早期的な対策を行うことが必要となります。

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