キッカケは食事制限ダイエット〜摂食障害の実態をもっと知ってほしい!〜|体験者インタビュー

更新日 2023年05月18日 | カテゴリ: もやもやする

今回は、摂食障害の方に摂食障害と向き合う苦しみや悩みをインタビューしてきました。まだまだ摂食障害への理解が低く、誤解も多い病気ですが、より多くの方に実態を知って頂きたいとの思いから、ご協力頂きました。

摂食障害当事者 みせす様(ニックネーム)
・性別:女性
・年齢:20歳後半
・職業:大学生(罹患当時)→大学院生→社会人(現在)
・状態:治療継続中(回復傾向)

摂食障害のキッカケはダイエット

ーー摂食障害を疑ったキッカケを教えて下さい


当時、食事制限によるダイエットをしており、毎日ひたすら食品のカロリーやダイエットに関する情報を調べていました。 「適正体重」「モデル体重」というキーワードで検索していたら、yahoo知恵袋にダイエット中の私の体重(40kg)が「摂食障害が疑われる体重」という記述を見て疑い始めました。

ーーどのようなダイエットをされていたのでしょうか?


主に食事制限です。太るのが怖くて食べられない状態に陥っていました。 大学2年生の時にダイエットを開始したのですが、1年半で57kgから34kgまで体重が減り、生理も止まってしまいました。

ーー拒食の状態だったのですね。その後も同様の症状が続いたのでしょうか?


拒食の状態は1年半ほど続き、その後はいきなり過食に転じました。 34kgから66kgまで体重が増えるほど、とにかく食べずにはいられない状態になっていました。 それからずっと『過食』ですね。ストレスがあると甘いものを食べたくて我慢できず、過食嘔吐(菓子パンを一度に10個食べた後吐く)や、無茶食い(際限なく食べまくる)などといった症状です。

摂食障害の過食症の症状の1つに「過食スイッチ」が入った、というのがあります。 何か甘いものを一口食べると、それがキッカケで一気に過食してしまうんです。 例えるなら、ダイエットをしているひとが板チョコを一口食べて、それがとても美味しく感じられて「今日だけなら良いよね」と、 結局全て食べてしまう行為を過激にした感じでしょうか。 「過食スイッチ」が入りやすいものとしては、チョコ、アイス、菓子パンなどです。

また、私の場合、希死念慮もありました。食べることを我慢できない自分への情けなさ、孤独、などがグルグルと頭の中で巡って自分なんか生きている価値が無いんだと思うことも度々ありました。

ーーそのような状態にあったにも関わらず、精神科に掛かるまでの2年間はどのような生活をされていたのでしょうか?


誰にどう助けてもらえるのか、SOSを叫ぶことすらできず、そのまま大学生活を送っていました。大学4年頃だったので、もう卒業することが、目標でした。

ーー通院を決断した理由やキッカケはなんだったのでしょうか


大学院へ進学し健康診断を受けた時に、校医との面談を通じて病院への通院が決まりましたね。治療を通じて、私が苦しんでいた症状は「摂食障害」という“病気”であること、と認識してからは「過食を我慢できない自分」を少しだけ許すことができたように思います。

自分にあった主治医と巡り合うまで

ーーどのような治療を行ってきたのですか?


薬物療法、認知行動療法、マインドフルネス療法の3つでしょうか。 薬物療法に関しては、通院1年目はSSRIのジェイゾロフト50mgと気分安定剤のデパケンR 200mg~400mgを服用していました。 1年間上記の治療を継続したのですが、効果が感じられなかった事や、症状の安定に伴い、今は主に漢方薬メインの治療を受けています。

漢方薬としては、四逆散をベースに、その時々で五苓散、防已黄耆湯、桂枝茯苓丸、桃核承気湯などと、頓服で睡眠薬のベルソムラ15mgを服用しており、たいぶ症状をコントロールすることができました。

ーーカウンセリングはどれくらい受けられたのでしょうか?


臨床心理士と精神科医のカウンセリングを受けましたね。月に2回ずつ1時間を約1年間継続しました。しかし、特に効果は実感できませんでした。 毎回1時間、私の過去の負い目や自分のことを話していたのですが、特になにも答えてくれず、ただ話して終わるという内容で、自分の事を全く知らない 臨床心理士や精神科医に対して自分の傷をさらけ出すことに相当な抵抗を感じていましたし、精神的な負担が大きかったため、止めました。

ーー現在の主治医とは良い関係を築かれていらっしゃるのでしょうか?


はい。とてもよい先生と出会えたと思っています。漢方薬も服用を続けることで心身も安定してきましたし、生活リズムも改善されてきました。 治療を通じて心身一如(心と体は一体である)という事を痛感しています。

ーーなぜ主治医のことを良い先生だと感じられたのでしょうか?


うまく答える自信はありませんが、3つのポイントがあると思います。

1つ目は、摂食障害に対して理解があるかどうか
2つ目は、自分に合っている(望んでいる)治療法を提供してくれるかどうか
3つ目は、自分が先生のことを信じれるかどうか

1つ目についてですが、初診が大学病院で、摂食障害も力を入れていたところだったことです。 他の精神科医にかかったこともありますが、精神科にも専門があり、摂食障害に理解がある先生にこしたことはないと思います。 また、知人の話を聴く限りでは、摂食障害領域で権威があり有名だからと言って100パーセント万能というわけでもないようです。これは後述する先生との相性の部分によると思ってます。

2つ目ですが、わたしの主治医は、ただ精神薬を「はい、どうぞ。これを飲んでくださいね」「5分で診療終わり」という診療をする先生ではなく、私の性格や行動パターンを分析しながら、信頼関係に重きをおく先生でした。 わたしは、もともと精神薬に抵抗があり精神科を避けていた人間なので、薬メインの治療に抵抗感がありました。 私は話をすることで思考が整理されるタイプなのですが、その性格に気づき、丁寧に診察してくださいました。

特に、認知行動療法を提案してくださり、「感情を紙に殴り書きして、吐き出す」ことが、回復のきっかけになりました。感情をえぐられたり過去の傷跡を触られることは多々ありましたが、そのおかげで1つ1つの封じ込めていたトラウマが解き放されたものもありました。

いろんな先生がいて、どんな治療が合うかどうかは人によって違いますし、いろんな考え方があると思います。私は、対話で治療を進めていった人間なのですが、逆に精神薬をメインにされる方もいますし、食事療法を受けられる方もいます。

3つ目は、摂食障害になる場合、もともと自尊心が低かったり、食欲をコントロールできない、ということから自分も他人と信じられなくなる場合があります。そのため、「信じていける先生がどうか」という直感的な相性ではないかと、私は思っています。

周囲の無理解と孤独で苦しんだ数年間

ーー摂食障害に罹って辛かったことはなんでしょうか?


摂食障害という病気に対して周囲の理解が無かったことでしょうか。 誰にも分かってもらえずとても孤独でしたね。また、過食してしまう自分自身が情けなかった・・・。 夜中に一人で過食して、そのままトイレで吐いて、気がついたらいつの間にか夜が明けていて新聞配達のバイクの音が聞こえて、 「あぁ、私は何やってるんだろう、またこんなことしちゃったな・・・」 明日はやめよう、次こそは、と毎回思っているのですが、どうしても止められない状態が辛かったです。

ーー周囲の方の理解はどうでしたか?


当初は、家族も友人もまるで腫れ物を扱うような目や気遣いをしていたように感じてました。 当時の友人たち(大学の研究室など)は、太ったり痩せたりを繰り返す私を見て「食行動が異常で、精神が狂っている人」という噂もあったようです。過食に加えてすぐにイライラするなど、精神的にも不安定でしたし、そのような捉え方をされたのかもしれません。

また、母親に関しては、「なんでそんなに食べるのか理解できない」といった感じで、深夜に台所で発狂しながら過食し、吐いてしまう私に対して、 冷たい視線を感じました。とても辛かったです。

ーーその中でご自身で病気と向き合うために取り組んだことはありますか?


自分なりに、病気のことを、調べてみました。

精神分析のような事をしてみたり、医学書を読み漁って病気のことを勉強しました。 また、摂食障害になる原因の1つとして「自尊心の低さ」があるので、少しずつ自信を積み重ねていく行動を起こしていきました。

ーー自信を積み重ねていく行動とは具体的にどういったものだったのでしょうか?


1つ目は、友達が主催するパーティーで料理を作ったことです。
「おいしいね」と言ってくれた友達を笑顔をみて、今まで身につけたスキルが活かせて、摂食障害になったことを少しプラスに考えるキッカケになりました。 摂食障害だと(私の場合)、太るのが怖くて外食なんて出来ないんです。 そのため、自炊したり弁当を作ったりしていました。主に蒸し野菜などの油を使わない料理を作っていたのですが、 その調理経験が活きました。 それまでは、私なんて生きている価値がない人間だと思っていたため、友人たちに喜んでもらえたことが嬉しかったです。達成感もありました。

2つ目は、管理栄養士の友達と子どもたちに科学実験ワークショップを提供するボランティア団体「キッチンの科学プロジェクト」を立ち上げました。摂食障害で拒食だったとき、大学で科学(生化学)を学んでいたにも関わらず、◯◯ダイエット、など、マスコミの情報に踊らされていて、自分のメディアリテラシーの低さに気がつきました。それから、理系の知識を今でこそ活かして、正しく科学の視点を伝えるべきだと思ったんです。摂食障害を通じ「食べること=生きること」を身にしみて感じたため、「自分からも伝えられることがあるんだ!」と気が付きました。自分にとっては大きなキッカケだったように思います。

3つ目は就職活動です。大学院2年で就活する時期だったのですが、なんとかやりたいことに近い仕事を見つけて、当時第一希望の会社に内定をもらえたことは、自分がまだ社会に必要とされる、一応就活している学生の中で選ばれた人間なんだと思って嬉しかったです。

最後に、食べる練習をしたことです。摂食障害だと、食べることがとても怖いにも関わらず、太るのも嫌でとにかく痩せたい、という気持ちが強く、絶食と過食と過食嘔吐が続いていました。そんな中でも食べる練習を継続している事や、徐々に症状が改善していることに対して、自信を持つことが出来ました。

ーー回復するに連れて、周囲の反応はどう変化していきましたか?


まず、自分から「摂食障害」であることをカミングアウトしました。 そして、それも含めて自分を理解してくれる、受け入れてくれる友達と付き合うようにしましたね。 また、同じ摂食障害を持つ人達とつながることで、お互いの調子を理解し合いながら、病状を客観的に理解することができ、暖かい絆を得ることが出来ました。

母親に関してですが、一緒に病院に行ってもらい、主治医から病気について説明してもらいました。 それにより、母親も病気や私に対する理解も深まったようで、今では「過食スイッチ」が入るような食べ物を 私の目の前に置かないように工夫してくれたりと、関係性はとても良く改善されたと思っています。

ーー同じ病気で苦しまれている方々へ向けて、メッセージを頂けますか?


私が今までそうだったように、今このコラムを読まれている方には、「過食」や「拒食」をしている自分が恥ずかしく、家族や友達にも不審な目で見られたり、病院に行っても 専門家医以外だと理解してもらえなかったり、孤独で苦しまれているかもしれません。

でも、あなたは一人じゃない。
一人で苦しみを抱える必要はない。
これ以上、頑張りすぎなくていい。
無理しなくていい。
きっと良くなる。
「生きててよかった」と思える瞬間が、いつかくる。

ちょっとの勇気で、周囲にSOSを出して、信頼できる友達や、私に教えてほしいと思っています。

ーー長時間のインタビューありがとうございました。


こちらこそありがとうございました。

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