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五月病という病について|西川公平 産業カウンセラー・専門行動療法士

公開日 2017年01月31日 |
カテゴリ: うつ病・憂うつな気分
五月病という病について|西川公平 産業カウンセラー・専門行動療法士

いよいよGWという事で、我々にとって忙しい五月病の季節がやってきます。と、言いたいところですが、実は五月病という病気はありません。

こころの病気が多いのは何月か?

下図はある健康組合の精神科の受診者の月別患者数です。男性が多く、女性が少ないのは、ある男性が多い企業のデータを元にしているからです。見て頂いてわかるように、月別にはほとんど差がありません。あえて微差を拾っていえば多くなるのは12月、10月であり、5月はむしろ少ない方の月となっています。

よりダイレクトに新規患者数でも統計を調査してみましたが、これは年によってバラバラでした。また大抵新規患者は各病院で制限されており、一定数以上にはならないため中々月次でデータを出すのが難しいかもしれません。

さらに、自殺で観ますと、これも平成23年は5月が多かったですが、他の年ではまた違う、といった具合で年によって多い月がバラバラでした。とにかくどのような調査を見ても「5月がピークに心の病が多くなる」というデータは存在しません。つまり五月病は現象として存在しません。

ですから、実際の所は、春に心の病を発病したものは春の行事についてネガティブに述べ、夏に発病したものは夏の出来事についてネガティブに述べ、という事で、5月あたりに発病したものが、4、5月あたりの事について述べているにすぎないのかもしれません。

精神科受信者の月次推移

■参考:けんぽれん 統計データ
http://www.kenporen.com/massmedia/toukei_data/pdf/chosa_h25_03.pdf

五月病という病名はあるの?

精神科の病名は、アメリカ精神医学会の診断分類であるDSMとWHOの診断分類であるICDの二種類に大別されます。DSMにある季節と関係する病名は、季節性情動障害(冬季うつ病)のみであり、これは冬の間、日照時間や光量が落ちるとうつ病を発症するというものです。ICDには季節と関連した病名はありません。つまり五月病は専門家の分類としても存在しません。

五月病っていったい何なの?

五月病という言葉を最初に言いだしたのは誰だか判りませんが、もともとは東京大学などに入学すべく受験勉強をとても頑張って、入学したのちに無気力になる状態が五月病であり、スチューデントアパシーなどと並べられる言葉だったようです。

1968年の流行語にもなりました。当時の他の流行語としては、ハレンチ、ゲバ、サイケ、ズッコケル、タレント候補、ノンポリなどがあるようです。時代を感じさせますね。国会議事録では昭和44(1969)年4月4日の衆議院内閣委員会に初出で、1977年には専門家の雑誌としては、「教育と医学」にて『"五月病"を考える<特集>』が組まれています。

つまり、今で言うところの“新型うつ病”のような、かつて流行っていた俗語だったわけです。

五月病が指す中身を今見ると

五月病について書かれているものを見ると、察するに「環境の変化に適応できず、うつ状態を呈する事」を指しています。春に入学や入社などがあり、最初の一か月は頑張って適応しようと努力するものの、元々思っていた理想と現実のギャップなどに疲弊し、5月頃に調子を崩すといった現象を指しているようです。

さて、そのような現象を現代精神医学で再考してみるとどのような状態なのでしょうか?五月病の中身が指すものは、現代で言うところの、うつ病、双極性障害、適応障害です。そのうち適応障害は、病名としてあまり意味をなさないので除外するとして、うつ病か双極性障害かが該当する病名となります。後述しますがこの病名の違いは大違いです。

うつ病/双極性障害とは

まず簡単に説明するとうつ病とは脳の機能が低下し、頭が回らなくなり、興味や関心が失せ、眠れなくなる病気です。つまり健康な状態よりダウンする事が中心の病気です。一方で双極性障害とは、ほとんどの時期はうつ病と同じダウンした状態ですが、ほんの短い時間だけ健康な状態よりアップすることがある病気です。この二つの病気を見分けることが出来る精神科医は現状多くありませんし、完全に見分けることも不可能です。

ですから心の専門家は当然ですが、うつ病/双極性障害の患者さん自身も「ひょっとしたら双極性障害/うつ病かもしれない」と疑い続ける必要があります。

先述した大きな違いとは、治療の違いです。精神科の治療はほぼ薬物治療ですが、双極性障害の患者さんが不用意に抗うつ薬を飲むと病気が悪化します。この二つの病気は症状が現れる形がほとんどそっくりにもかかわらず違う病気なので、誤った診断によって、間違った投薬がなされることがとても多く、しかもそれを避けるためには『疑い続ける』というような消極的な方法しかありません。

したがって専門家は積極的に調子が良かった時期があるか(双極性障害だというエピソード)という質問を重ねることを行い、それらが存在しない時に初めてうつ病という病名をつけることが可能です。

五月病の発病時点

別の文章「心の病と偏見について」にも記述しましたが、ストレスが心の病を招くという方向性はいささか誤解があります。心の病とは環境の変化に適応できなくなる病気であって、環境の変化に適応できないから心の病気になるわけではありません。

死に直結しかねないような極度のストレスでない限り、我々は心の健康状態がある程度良ければ、何とか新たな環境に適応していくことが出来ます。もっと言えば、五月病の発病時点はおそらく5月より以前であり、発病して能率や判断力が落ちていることに気が付かないまま、大きな環境変化に苦労を重ねて自らをすり減らし、ある日動けなくなるのでしょう。

しかし、どうでしょう。その4月に頑張っていたのが本人の通常よりもいささかハイテンションであり、睡眠欲求が減少して寝ないで仕事していたり、色々な事柄にどんどん意識が広がってあれもこれもと手を広げすぎたり、アイデアがじゃんじゃん湧いてきたりと、つまり躁症状があったという事だってあるかもしれません。ほんの2日ほどでもそのような日があれば、双極性障害の可能性は否定できません。(別に4月でなくても、高校時代にそういう時期があったという事でもかまいませんが)

五月病の有効利用

五月病は実体としてうつ病/双極性障害でありながら、いささかポップな側面を持っています。五月病という事であれば納得して受診しやすいという可能性があるわけです。

五月病と思って病院に行った時、状態は悪いわけですが、そこでお医者さんが、あえて「これまでですごく調子が上がる時が無かったですか?」という質問をしてきた時、そこはまともな医療機関です。

そのような質問がなされる事なく「うつ病ですね。お薬を出しましょう」と言ってきたとき、そのお医者さんは専門医ではありません。

「適応障害ですね」と言ってくるのは、「病名を聞くと落ち込むかもしれないから、本当の病名を言わないでおこう」という精神科の伝統的な誤った優しさの表れです。

五月病ですね、と言ってくるのはお医者さんじゃありません。

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