自分らしく生きたい!そんな人たちに寄り添う心理療法 ーー 人間性心理学ってどんなもの?

更新日 2023年05月18日 | カテゴリ: カウンセリング

臨床心理学を学問的基礎とするカウンセリングには、様々な学派があります。その中でここでは人間性心理学を紹介しましょう。

人間性心理学の成り立ち

人間性心理学は臨床心理学の歴史の中で比較的新しいものです。1960年代以降にアメリカの西海岸を中心に広まってきました。人間性心理学の一番の特徴は、人は1人1人がユニークで、成長したい!自分らしく生きたい!そういう存在なんだよ、と考えていることです。

そんなこと当たり前じゃん、と思われるかもしれません。でも臨床心理学が生まれたころはそうでもなかったんです。だから当時はとっても凄いことだったんです。

臨床心理学はフロイトの創始した精神分析が19世紀末から大きな力を持っていきました。精神分析では人は無意識(本人は気づいていない心の部分)に押し込められた欲求や過去の体験によって突き動かされていると考えています。

今の悩み(不安や体の不調等)は、過去の辛い体験が心の奥底に仕舞われて気づかなくなってしまって、気づかないことで何とか対応し続けてきたからなんだ!と考えます。そのため目に見えない心の中の動きを扱おうと試みてきました。

しかし目に見えないものを扱うことなんて出来るわけない!と精神分析の考え方に文句を言い始めたのが行動主義の人たちです。この人たちは、人の行動=心の動きと考え、その人が生きている環境から学習したものだと考えます。

だからこの人たちは、今の悩みは間違った方法を覚えちゃったから、現実の生活で問題が起きてしまっているのだ!と考えます。そのため間違って覚えちゃった行動を治すことを試みてきました。

この様に見てくると、精神分析の人たちは心に振り回されている人、行動主義の人たちは間違った行動を覚えちゃった人と、何だか受け身な人間観だな、という印象はありませんか?

そんな風潮に異議を唱えたのが人間性心理学の人たちです。人はもっと、成長したい!自分らしく生きたい!て思ってるんだ、と言い出したのです。本来人は自分が悩んでいる姿も否定しないで、それも自分の一部なんだと認めて、受け入れて今後に活かしていける、そんな主体的な存在なんだ、と考えているのです。

そして人間性心理学を基礎とした心理療法は悩んでいる人の主体性と自由を尊重し、その人の責任を明確にし、これまでの精神分析や行動主義の人たちに大きな影響を与えました。

人間性心理学の人間観

人間性心理学の成り立ちがもともと精神分析や行動主義の考え方に批判するところから生まれているため、当時の時代精神を共有した沢山の理論家たちの考え方の総称でした。でも共通した人間観があるので、ここでまとめてみましょう。

・人は1人1人が独自の個性をもったユニークな存在!
・人は自分の中に成長する力を持っている。
・過去ではなくて「今、ここで」体験されることが重要。
・人は自分らしく生きたい!と思っている主体的な存在。
・自分で自分のことを決める責任を持っている。
・人と人との出会い、そこに生まれる関係がその人の成長や変化を生む。

人間性心理学の人間観はとても暖かく、人の肯定的な側面、成長、可能性、創造性に注目しているのです。

そのため、人のもつ悪い部分、影になっている部分を見落としてしまう、主観的な体験ばかりに目が向けられ客観性が欠ける、といった批判もしばしばあるのも事実です。

クライエント中心療法

有名な人間性心理学者たちが沢山います。クライエント中心療法のC.R.ロジャーズやゲシュタルト療法のF.S.パールズ、フォーカシングのE.T.ジェンドリン、そしてアウシュビッツの強制収容所の体験を描いた『夜と霧』の著者としても知られているV.E.フランクル、最近『嫌われる勇気』などで有名なアドラーも人間性心理学者の一人に数えられたりもします。

今回ここでは、現在では臨床心理学的援助だけでなく、援助職の心構えの基礎として考えられている、C.R.ロジャーズのクライエント中心療法をご紹介しましょう。

C.R.ロジャーズは、人は「今、ここ」のありのままの世界を心と体で体験している、と考えていました。そして人は自分の態度や気持ちを自由に表現することが出来れば自然と心穏やかになっていく、そういう力を持っている、と考えていました。だから過去に遡って現在のその人を理解しようとする精神分析やその人の行動をみて客観的に理解しようとする行動主義とは違います。

ロジャーズは悩んでいる人のことを、こう考えました。こうありたい!という自分と、でも結局はこんな自分でしかないんだ、という差があまりに大きくて如何とすることも出来なくなっている人、と考えました。そしてその人が立ち直っていくプロセスは先ずは、「あ~、今自分ってこんなだな」とか「これに悩んでいるんだ」と気づく。

次に「しょうがないけどこれが自分なんだよね」と認めてあげられるようになる。そして「うん、自分で自分の望んでいる方向へ歩いていこう」と思うようになることだと考えました。しかしなかなかこれを1人でやるのはしんどい時があります。本当にしんどい時にそれをやるために、悩める人とそれを援助する人との関係=カウンセリングが必要だ、と考えたのです。

1957年に『セラピーによる治療的変化の必要にして十分条件』という論文の中で、カウンセリングの条件、悩んでいる人の状態、カウンセラーが守るべき態度が示されており、適切な期間(カウンセリング)が悩める人とそれを援助する人の間にあることが必要だ、と言いました。

この論文の中で述べられたカウンセラーが守るべき態度、これが今、現在カウンセリングの場面だけでなく多くの聴く側の態度の基礎となっているのです。それは3つあります。

1 ) 無条件の積極的関心
2 ) 共感的理解
3 ) 純粋性

と呼ばれています。そしてロジャーズはこの内 1 )と 2 )の無条件の積極的関心と共感的理解が必要最低限悩んでいる人に伝わっていることが重要だ、と述べました。

これら3つをご説明して人間性心理学のご紹介を終えたいと思います。

無条件の積極的関心

「無条件」に相手を受け入れようとする態度のことです。一般的には酷いと言われるような言動があっても、そのことを言う相手を批判せずに受け止めるということです。

例えば、「お父さんなんて大嫌い!」と言ったとしても、何て反抗的な!と捉えるではなく、「そうか、お父さんなんで大嫌いという感じなのか」とそれに対して否定も肯定も挟まずに、まるごとそのままを受け止めていく態度です。

共感的理解

相手の世界を相手が感じ考えているように、その微妙なニュアンスも、相手のありのままを受け止めようとする態度のことです。ここでとても重要なことは「あたかも○○さんのように」という性質を失わないことです。聴いているこちらの感情や考えは横に置いておかなければいけないのです。

例えば、「部長、すげー頭にくる!!」と怒っていた時、一緒に「そりゃ、最低だ!」怒ってしまったら単なる同情や同感です。○○さんの立場だったらそうだろうな、○○さんはきっとすげー頭にくるだろうな、自分のあの時の怒りと同じくらいかもしれない、と精一杯こちらの想像を膨らませて、本当の相手の怒りを理解することは出来ないことを踏まえて、「あたかも○○さんのように」怒りを感じて理解しようとすることです。

純粋性

相手のお話を聴いている時にこちらに沸き起こる感情や気持ちを素直に認める態度のことです。

例えば、つまらない話を延々と続けている人がいた時に、聴いているこちらはつまらない、飽き飽きしているなんて思ってない、と否定するのではなく、関心が持ち続けられない自分が居ることを認める、ということです。

そのことを相手に「私つまんない!」と伝えなければいけないのではありません。つまらないと感じていることを認めることが大切なのです。飽き飽きしているのも事実ですが、一方で聴かなければ、聴くことでもっと相手を理解したい、という気持ちもあるのも事実です。

お話を聴く過程の中で自分に沸き起こる感情、考えに正直にいる。話を聴いている側に嘘や偽りが無い、このことが相手に安心感を与え、ありのままを話すことができるカウンセリングの場が作られる、とロジャーズは言っているのです。

いかがですか?人間性心理学は、1人1人の個性を尊重して、自分らしく生きたい!そんな人たちに寄り添う心理療法なのです。

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