更新日 2024年08月25日 | カテゴリ: 自分を変えたい
トラウマ(trauma)については、「精神が強烈な情緒的ないしは感覚的な刺激を受けることで、その機能が一時的に、ないしは不可逆的に失調をきたす事態」(『心理臨床学大辞典』培風館)という一般的な定義があります。
しかし、 “いじめられてつらかった”という主観的な体験は、現実のいじめの内容や程度に関わらず、その人の心に深い傷を残すものです。いじめの体験があったとしても、たいていはその後の学校生活や家庭生活を通じて、自然に癒えていくと考えられていますが、あまりにも深い傷が残ってしまった場合、新しい環境に入るたびに「なじめず、またいじめられてしまうのはないだろうか」と強い不安を感じることがあります。
また、人間関係でうまくいかないことがあると、以前のいじめられた体験がリアルによみがえり、恐怖や苦痛を感じてしまったりすることもあります(フラッシュバックといいます)。
前述したようなフラッシュバックが繰り返し起きて苦しみ続けたり、人間関係で傷つくのが怖くて適応的な社会生活を送れなかったり、トラウマ性のストレスによる身体症状(パニック、不眠など)が長く続いたりする場合には、カウンセリングが有効かもしれません。この場合、カウンセリングを受けることには以下のような意味があると考えられます。
いじめられるということは、「自分の居場所を失う」ということです。人の目を気にしてビクビクしてしまったり、自分の意見を口にできなくなってしまったりします。いくら「聞いてあげるよ」と言われたとしても、人を信じられないというトラウマが強く残ってしまった人にとっては、本音をさらけ出すことそのものが難しいことでしょう。
そういった場合、守秘義務のあるプロのカウンセラーや、誰にも邪魔されず話のできる相談室といった空間を確保することが有効となります。守られた環境があってこそ、本当の自分の気持ちを自由に振り返ることが可能となるのです。
いじめ被害者は、「相手をどうしても許すことができない」、あるいは「いじめられるような自分が悪いに違いない」といったネガティブな考えに苦しめられることがあります。カウンセラーは、そのような主観的な思いを大切に取り上げつつ、「いったいどのようなことが起きていたのか一緒にふりかえってみませんか」とクライエントに働きかけます。
カウンセラーの客観的な視点が入ることにより、「自分だけが悪いわけじゃなかった」「相手にも事情があったのかもしれない」「納得はいかないけれど、終わったことだ」等の新しい認識が生じ、クライエント自身の気持ちが変化していくことがあります。
いじめによるトラウマと向き合うためのカウンセリングでは、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。さまざまな考え方にもとづくさまざまな心理療法がありますが、ここでは代表的なカウンセリング技法について紹介します。
エクスポージャー法は、認知行動療法のひとつです。トラウマの記憶によって、人はそれに似た状況に遭うと「恐怖」や「不安」を強く感じるようになります。そしてなるべくその状況を回避したいと考えるようになります(無自覚の場合もあります)。
例えば「自分をいじめた人に似た人の前では、恐怖で体が固まってしまう。だから会うのを避けている」という場合、それが“年に数回しか合わない人”ならば、何とか理由をつけて回避できるかもしれません。しかし、“毎日顔を合わせなくてはならない上司”だとしたら、避けては通れませんね。仕事に支障が出る可能性もあります。
そのような場合、カウンセリングでトラウマの記憶と向き合い、「記憶そのものは恐怖体験だったが、現実は安全であること」を確認します。そのうえで、苦痛を感じる場面を具体的にリストアップし、不安レベルの低い場面から実際にひとつひとつ向き合って「避けなくても大丈夫なんだ」という体験を積み重ねていきます。
まずクライエントが、トラウマとなった体験や状況をイメージします。カウンセラーがクライエントの目の前に指先を立て、左右に動かすのを追視します。これを不安がなくなるまで繰り返していきます。なぜこのような眼球運動によってトラウマが軽くなるのか明確にはなっていませんが、ある程度の効果を確実に上げるという報告がされています。
ただし、EMDRを実施できるカウンセラーには限りがあるため(技法の獲得には一定のトレーニングを受ける必要がある)、実施可能な人や機関をあらかじめ調べるようおすすめします。
※参考リンク
日本EMDR学会(治療者リストがあります)https://www.emdr.jp/
カウンセラー、あるいはカウンセリング技法がうまく作用するかどうかには、「相性」の問題も大きく含まれます。もしも「合わないな」とか「違う気がする」と感じたときには、思い切って止めてみることも大切です。我慢して続けた結果として、“二次被害としてのトラウマ”が生じる可能性があるということも頭に入れておきましょう。自分を大切にする心がけをお忘れなく。
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