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不登校・いじめのない世界へ(1)なぜ不登校は増加しているのか?|近畿大学准教授 大対香奈子

更新日 2016年12月15日 |
カテゴリ: 専門家インタビュー
不登校・いじめのない世界へ(1)なぜ不登校は増加しているのか?|近畿大学准教授 大対香奈子

ーー不登校・ひきこもり問題の現状と対策について、教えて頂けますでしょうか。


まず、不登校とひきこもりについては、切り分けて考える方がいいように思います。かつては、ひきこもりの90%ほどが不登校の延長で起きているという時代もあったようですが、現在の引きこもりの実態は少し変わってきているという話もあります。

まずは不登校について先にお話ししていきます。

不登校の定義と実態

不登校についての文部科学省の定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」とされています。この定義に沿った、実態調査も毎年行われており、2014年度の小中学生の不登校児童生徒数は122,897人、前年度よりも2.7%増と報告されています。

12万人という不登校児童生徒の数は、ここ10年間ほど大きく変動しておらず、ほぼ横ばい状態と言えます。また、盲点になりがちなのが、高校生の不登校生徒数です。2014年度の報告では53,156人となっており、発生率で言えば高校生の方が小中学生よりも高くなっています。しかし、義務教育からは外れるために、高校生年齢の不登校については支援が急に薄くなってしまいます。この点については、後に述べるひきこもりへとつながるリスクを高めることにもなり、今後の更なる対応が必要とされる年齢層であると考えられます。

不登校の増加の背景

不登校は、先にも述べたように増加しているというよりはほぼ横ばい状態が続いています。不登校の増加が社会問題としても注目され始めたころに、その対応策としてスクールカウンセラーが配置されるようになりました。その結果、一定数の不登校の減少は認められたものの、新規で不登校となる数が同数程度あり、最終的な不登校の児童生徒数というところには変化が見られていないという状況があるようです。また、この新規の不登校児童生徒数だけの変化で言えば、1993年度は約33,000人だったのに対し、2014年度は約65,000人と増加傾向にあることも報道されています(朝日新聞、2016)。

長年の取り組みにも関わらず、新たに不登校となる児童生徒が絶えず生まれてしまうという背景については、いくつか考えられますが、最も大きな要因であるように私が考えるのは、子どもの教育的ニーズの多様化に、今の学校が対応しきれていないということです。教育的ニーズの多様化というのは、様々な次元が含まれます。例えば、子どもを取り巻く経済状況です。昨今、日本における子どもの貧困が問題視されていますが、日本における子どもの貧困率は16.3%と先進国の中でも最高水準だということです。

その背景には、1人親家庭の増加もあるようですが、朝から晩まで必死になって働き家庭を支えている母親(あるいは父親)が、子どもたちの宿題や登校など学校生活のサポートにまで手が回らないという状況は不登校とも関係してくる可能性はあります。また、別の次元では、子どもの発達的特徴の多様化ということがあります。

文部科学省が2012年に行った「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」によると、学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は6.5%であると報告されています。これは40名の学級で2~3名、支援を必要とする児童生徒が在籍しているということになります。これはあくまで「著しい困難」を示す児童生徒の割合ということですが、私自身が学校コンサルテーションなどでたくさんの学校の様子を見せていただく中で感じる、「要支援」の児童生徒の割合は発達障害の有無に関わらず10~15%くらいになるのではないかと思います。

また、その要支援の中身は、児童生徒一人ひとりについて当然違ってきます。担任の先生は、そのような多様な支援のニーズに、一人で応えなければいけない状況に今置かれています。もう一つは、文化背景の多様化です。この点については、今後さらに進んでくると考えられますが、日本に住み、労働する外国人が増加していく中で、様々な文化背景を持つ子どもたちが同じ教室で学ぶという状況が増えてきています。

このような、子どもたちの教育的ニーズの「多様化」がどんどんと拡大していく中、学校現場ではその対応が十分に追いついているとは言えない状況にあり、今までの一斉指導型教育や、担任教員の力量任せの対応だけではどうにもならないのが、教育現場の実態ではないかと思います。そう考えると、教育方法や教育環境の在り方を根本的なところから見直すべきであるということも言えます。

不登校への対策の現状

これまでに国策としても進められてきた、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置による対応は、一定数の不登校の減少という効果が認められてはいるようです。

また、自治体独自にも様々な取り組みがされており、北九州市教育委員会は不登校の児童生徒を対象にした宿泊行事「ワラビ―キャンプ」を実施しており、キャンプ活動を通して自信をつけることで登校日数が増えるという効果が見られています。東京都福生市では、2014年から「個別支援カルテ」を作成し、情報をスクールカウンセラーと共有したり、必要に応じて医療や福祉機関とも連携をとることで、不登校発生率が6%から4%に減少したとも報告されています(日本経済新聞、2015)。

不登校児童生徒の受け皿として重要な役割を担っているのが、フリースクールです。文部科学省の実態調査によると、小中学校に通っていない義務教育段階の児童生徒が通う民間施設としてのフリースクールは全国に474か所あるということです(日本経済新聞、2015)。

不登校の児童生徒がフリースクールや家庭で学ぶことを義務教育の制度内に位置づける法案についても検討され始めていますが、それに対しては「不登校を助長するのでは」という慎重派の意見もあり、まだ法案の成立にまでは至っておりません。いずれにしても、フリースクールが不登校の子どもたちの学習の機会を保障するために重要であるということは確かなことです。

全体として、現在取られている対策の多くは、不登校に既に陥っている児童生徒へのケアという視点を中心としたものになっています。

これからの不登校対策に必要なこと

文部科学省国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター(2012)の報告によると、不登校・長期欠席を減らすことに有効であると考えられる施策として、以下の3点が重要であると指摘されています。

まず1つ目は、新たな不登校を生まないようにする取り組みです。先にも述べたように、今現在不登校となっているその問題の解消以上に、新規の不登校をいかに生み出さないかということが、結果的に不登校を減少させるためには重大な課題であることが分かってきています。

2つ目は、早期発見・早期対応という初期対応を速やかに進めることです。不登校に陥ってからの対応となると、少なくとも30日間の欠席を確認してからの対応ということになりますが、それまで待たずして欠席の兆候が見られれば即座に対応するということが、不登校を解消する上では有効であると言われています。

その根拠として、不登校の児童生徒数が急激に増加する時期をもって「中1ギャップ」と呼ばれますが、中1からいきなり不登校になるというケースは全体の20~25%程度だそうです。むしろ、多くのケースは小学生の時期から不登校傾向が見られ、そのような不登校経験のある生徒の50%は中1になった7月までに欠席日数が30日を超えるというデータもあります。つまり、不登校となるハイリスクの児童生徒は、その前年度までの欠席状況から特定が可能であり、ハイリスクとされる子どもについては、30日を待たずして連続した欠席が見られればすぐに対応すべきであるということです。

3つ目は、1つ目のポイントとも関係してきますが、魅力ある学校づくりをめざし、未然防止の取り組みをすることです。未然防止には、特に対人関係の改善と、学習面の改善が重要であると考えられています。具体的には「分かる授業」を実施し、学ぶ意欲を育て、全ての児童生徒にとって居心地がよく、みんなが活躍できるような場として学校を作っていくということです。

ここで指摘されている3つの点を見ても、学校教育の在り方を大きく転換する必要性が感じられます。

<関連コラム>

不登校・いじめのない世界へ(2)ひきこもりに必要な総合的支援|近畿大学准教授 大対香奈子
不登校・いじめのない世界へ(3)ソーシャル・スキル・トレーニングのすすめ|近畿大学准教授 大対香奈子

<参考文献>

教科で育てるソーシャルスキル40-本物の力は良い授業で育つ!(明治図書) 著:阿部利彦・桂聖・盛山隆雄・平野次郎・清水由 (2015)
ドキュメントひきこもり〜「長期化」と「高年齢化」の実態(宝島社)著:池上正樹 (2013)
不登校・長期欠席を減らそうとしている教育委員会に役立つ施策に関するQ&A 著:文部科学省国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター(2012)
このまま使える!子どもの対人関係を育てるSSTマニュアル-不登校・ひきこもりへの実践にもとづくトレーニング-(ミネルヴァ書房)編集:大阪府立子どもライフサポートセンター・服部隆志・大対香奈子(2014)
不登校ゼロの達成(明治図書)著:小野昌彦 (2006)
ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン 著:齋藤万比呂 (2010)
CRAFTひきこもりの家族支援ワークブックー若者がやる気になるために家族ができること(金剛出版)著:境泉洋・野中俊介 (2013)
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