更新日 2024年08月23日 | カテゴリ: うつ病・憂うつな気分
うつ病等の気分障害で精神科・心療内科等を受診する人の数は年々増える傾向を見せています。 10年前・20年前に比べれば、メンタルヘルスに対する認識・感覚は大きく変わってきていると言えるでしょう。
しかし、いまだ私達の感覚が世界標準とは大きくずれているものもあります。 それが「精神病が重くなったら入院する」というものです。
「病気が重いのだから、入院するのは当然」--そう思っていませんか? 今回は日本における精神科治療の問題点、そしてひとつの「理想モデル」であるイタリアの地域ケアシステムについて解説していきます。
精神科での入院に対応をしたベッドの数は、世界全体で約185万床。 そのうち実に30万以上、20%以上のベッドが日本にあるということは意外と知られていません。
経済協力開発機構(OECD)の報告でも、日本の人口10万人に対する精神科の病床数は269床とされています。 これはOECD加盟国の中でも突出して多く、加盟国平均の4倍以上ともなる数です。
強制入院や閉鎖病棟への収容といった行為も伴う精神科病床数の多さは、人権問題への抵触ともなる恐れもあります。 そのため欧米を中心とした各先進国では1970年代以降から精神科病床数の低下に務め、ベルギー、オランダといった比較的病床数の多い国においても年間の病床数には低下が見られています。
ところが日本では、いまだ精神科の病床数には大きな動きが見られないのが現状です。 更に厚生労働省の調査によれば、精神科の入院患者の中で1年以上の長期入院をしている人は、その中の70%近く。 私達の中の20万人以上が、精神病院に「入れられたまま」となっているわけですね。 「重い精神の病気にかかった人は閉じ込めておく」--このような前時代的な「隔離」の対応が、日本ではいまだ常態化しています。
日本のように精神病院が突出して多い国から見ると、「入院する受け入れ先が無いなんて、困るのでは?」と思う人が多いのではないでしょうか。 しかし例えばメンタルヘルスへの取り組みを早くから行ってきた国・イタリアでは、現在精神病院は「無い」状態なのです。
かつてはイタリアでも巨大な「マニコミオ」と呼ばれる大きな精神病院が作られ、その中には多くの患者が長期入院を強いられてきました。 しかしバザーリアという医師がこの問題に改革をしようと運動を始め、この運動はイタリア全土へと広がっていくことに。1978年には精神科病棟の開設を禁ずる法律が制定され、70年台のうちに「新たな精神病院」はイタリアからなくなっています。
更に政府による改革は進められ、1990年台のうちには精神科病棟のすべてが閉鎖となりました。 精神科の病床数ゼロへ---たった20年の取り組みで、イタリアはこの大きな改革をやってのけたのです。
「精神病院がなくなったら、患者たちはどうするのだろう?」
そう思われる方もいるかもしれませんね。 イタリアでは「病床から地域へ」「隔離から地域へ」という取り組みが行われてきました。 今でいう「地域ケアシステム(地域包括ケアシステム)」--つまり在宅療養を地域全体で支える体制へと、早い時点で切り替えられてきたのです。
例えば地域精神保健センターによる在宅ケアでの密なコミュニケーション。 アパート、グループホーム等の設立による患者達の自立補助。 医師・看護師等を有した専門機関・福祉機関と自治体が連携したケア。 生活費等の金銭問題の支援…様々な方向性からの取り組みが行われたことで、患者たちは「地域社会」へと戻っていくことができました。
現在では日本でも地域包括ケアシステムへの取り組みはスタートしていますが、残念ながら現在のところその動きは大きなものとはなっていません。 病床数の低下も2004年の政府発表から10年を経ても1万の減少に留まっており、いまだ世界標準にははるか遠く及ばない状態です。
うつ病等の精神疾患にかかる人が増えた分、日本でも「心の病気」「精神の病気」は以前に比べて身近なものとなりました。 ご自分が心の病気にかかったことがある、家族や友人が心の病気に悩んでいる…そんな方も多いのではないでしょうか?
「精神病院に隔離をされる」--それは「遠くの知らない誰か」の話ではなく、私達のごく身近な話なのです。 地域ケアシステムの推進がされるにあたっては、私達の一人ひとりがメンタルヘルスに対する認識を変えていくことが必要です。 今改めて、「地域で支える」「地域に支えられる」このような形の精神疾患のサポートのあり方を、模索すべきタイミングなのではないでしょうか。
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