アルコール依存の親から解放されるために必要なこととは

更新日 2023年05月18日 | カテゴリ: 子育て・家族関係

アルコール依存症によって医療機関を受診している人の数は、日本でも4万人を突破しています。 また医療機関を受診しない「潜在的アルコール依存」は更に多いと言われており、アルコール依存は非常に身近な問題となってきました。 また近年問題視されるようになっているのが、アルコール依存となった本人ではなく「家族」への影響です。

アルコール依存症は「家族病」とも言われるほど、依存者本人以外の家族の精神的影響が大きく、特に親がアルコール依存であった場合の子供の人格形成に甚大な問題をもたらすことがわかっています。

アルコール依存の親の元で育った子供たちは、成長をして成人をしてからも両親から精神的に解放されません。 社会生活に大きな支障を来し、自分の人生を壊すような問題が起こってまでも「親を見捨てられない」という心理に縛られてしまうケースが多いのです。 アルコール依存の親から解放をされるためには、一体何が必要となるのでしょうか。 ここではその3つのポイントについて解説をしていきましょう。

1.「機能不全家族であった」という自覚

アルコール依存の親の元で育った子供たちは、自分の過去の家庭環境について可能な限り肯定的な受け止め方をしようとします。 「酒は飲んだけれど、暴力は振るわれなかった(物理的虐待は無い)」 「酒は飲んだけれど、優しいときもあった」等等… 「自分の家族は異常な点もあったが、それほど酷いものではない」という受け止め方で自らを守ろうとしているのです。

しかし本来、アルコール依存患者がいる家庭で問題となるのは「家族が家庭として機能をしていない」「親が親という機能を放棄している」という点です。


・しつけ・訓戒等の家庭内ルールが一貫していない

・家事や弟妹の教育といった親の役割・責任を子供が担う

・子供が常に親の感情状態・行動等の様子をチェックする

・常に家庭内に不安や緊張、NGな話題等の暗黙の了解がある

上記はあくまでも一例ですが、このような状況下にある家族は「家庭としての機能ができていない」と言えます。 もちろん家族としての機能ができている家庭であっても、一時的に不和や緊張状態が起こることや、諍いやすれ違いが起こることはあるでしょう。

しかしアルコール依存患者が家庭内にいる場合、上記のような混乱や強いられる緊張は慢性的なものであり、それらを子供は「当然のこと」として受け止めます。 そして本来子供が追うべきではない様々な役割を追うことになるのです。

自分の家庭が「機能不全家族」であったのだと自覚をすることが、親から解放をされるための大切な一歩となります。

2.「必要とされたい」という見捨てられ不安の自覚

アルコール依存症の親の元で育った子供たちは、常に親からの愛情の不足を感じ続けて育ちます。 「ありのままの自分が思い切り愛される」という経験・実感が無いことから、自分に対する自己評価・自己肯定感は著しく低く、無価値感にとらわれがちです。

「愛される」という自信が無いことから、他者から必要とされることを無意識の中で強く望む傾向も持ちます。 また精神的・物理的に「見捨てられる」ということに対して非常に敏感であり、自分の感情や嗜好よりも周囲を優先させてしまいがちです。

アルコール依存の親達から多々の迷惑をかけられた時、子供達は困惑したり、時には怒りを憶えることもあります。 しかし親から迷惑をかけられながら頼られるのは、子供にとって「必要とされている」という実感が得られる時でもあるのです。

親から離れることに対して「見捨てるのが辛い」と感じるのは、「親から見捨てられるのが怖い」ということと同義と言えるでしょう。 常に誰かから必要とされたいと願っている自分の気持に気づくことが、この問題を解決するためのファーストステップです。

3.「世間体」を取り繕おうとする他者評価優先志向の自覚

アルコール依存症の家族が居る家庭では、「普通であるように見せよう」「健全な家族であるように見せよう」という事項が大きく優先されがちです。 問題が無いように見せること、標準的であること、理想的であるように見せること…このような努力が常態化していることもあります。 また機能不全家族の中で育った子供は、親から愛され家族を支えようと「良い子」であろうとし続ける傾向も持ちます。

「普通の家庭」がわからない不安がある分、世間一般で「理想とされる普通の家庭」(世間体)を重視したり、一般的に他者評価を得やすい行動に考えが傾きやすいのです。 世間体・体面・常識といったものに囚われやすく、自分の感情や幸福といった事項は後回しにする傾向を持ちます。

このような「良い子・良い家族でなくてはならない」という思い込みや認知の歪みに気づくことも、親から解放をされるために必要なステップです。

おわりに

アルコール依存の治療については、専門的な対処が必要であることをご存知の方も多いことでしょう。しかしアルコール依存患者の家族が持っている「心の問題」の大きさについては、まだ知られていないのが現状です。

上記で解説した心の問題については、当人が自分自身だけで自覚をすることが難しく、また周囲の無理解や知識の少なさによってますます問題を悪化させるケースが散見されています。アルコール依存の親の元で育った子供が自分の問題に気づき改善をしていくには、専門知識を持った他者との信頼関係を築いていくことが大切なのです。

「家族の問題は家族で解決するべき」といった思い込みを捨てることが、子供が親から解放されるために最も重要な点と言えるかもしれません。

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