現役心療内科医が解説!うつ病の診断基準と治療の流れ

更新日 2024年08月23日 | カテゴリ: うつ病・憂うつな気分

ストレス社会といわれる現代社会を生きている私たちにとって、ストレスに関連する病気はとても身近に感じられるようになりました。

中でも、ストレスが原因で発症するうつ病は、日本人の7人に1人がかかるともいわれるくらい一般的な病気となっています。

うつ病は、パニック障害、不安障害、適応障害などさまざまな病気を併発します。

今回はストレスで発症するうつ病とその周辺の病気を、どのように治療したらよいのか、解説します。

うつ病ってどんな病気?

  • ・気分が落ち込んでいて、なにもやる気がなくて、なんだか疲れやすい。
  • ・そういえば、うれしいって思ったことはいつ以来だろう?
  • ・何かに感動したことって、最近あっただろうか?
  • ・何もしていないことに、すごく焦りを感じてしまう。
  • ・何もしていない、何もできていない自分には価値がない。

こんなことを思うとき、うつ病かもしれません。

DSM‐Ⅳという、アメリカの精神医学会で定められている精神疾患の分類と診断のマニュアルがあります。

そこでは、うつ病(大うつ病)の診断基準を以下のように定めています。

大うつ病の診断基準(DSM-IVより)

以下の症状のうち5つ以上が同時に2週間の間にあり生活に支障が出ている。症状のうちひとつは(1)の抑うつ気分、または、(2)の興味や楽しみの喪失がある。

  • (1)1日の大部分の時間、毎日のように気分が憂うつ(例、悲しいまたは空虚な感じ、涙もろい表情、小児や思春期では怒りやすい)
  • (2)1日の大部分の時間、毎日のように何に対しても興味と喜びを感じない。
  • (3)体重の5%以上の増減が1ヵ月間にある。または、ほとんど毎日、食欲がないか、反対に亢進している。
  • (4)ほとんど毎日、眠れない、または寝すぎる。
  • (5)ほとんど毎日、いらいらしているか、何もやる気がない。
  • (6)ほとんど毎日、疲れやすいかまたは気力がない。
  • (7)自分に価値がないと感じたり、悪いことをしたと思う。
  • (8)思考力や集中力が落ちている、決断できない。
  • (9)死ぬことをしばしば考えたり、その計画を立てる。

この症状は非常に辛いか、日常生活に支障をきたす。
アルコールや薬物中毒や内科の病気によるものではない

この診断基準は、2週間、このような症状がみられていれば、うつ病の可能性が高くなる、ということを表しています。

軽症うつ病は、上記診断基準の9項目のうち、5項目をおおむね超えない程度満たしている状態で、社会生活にもあまり大きな影響がない程度の症状が認められるものです。

重症のうつ病は、上記診断基準を5項目以上満たしており、症状は極めて苦痛に感じられるほどになります。

現在、多く見られるのは軽症から中等症のうつ病ですが、中にはとても我慢強い方がいて、重症になるまで頑張ってしまって、とてもつらい思いをする場合があります。

また、うつ病では胃炎、腸炎、便秘症、頭痛、肩こり、腰痛など、体の症状が合併することがあります。

その際には体の症状も同時に治療する必要があります。

うつ病の治療経過

  • ・気分が落ち込んで、動けない
  • ・いつも何かしら不安を感じている
  • ・動悸、過呼吸などの症状がある
  • ・眠れない

などの症状があり、日常生活を送ることに支障がある場合、不安症やパニック障害、そしてうつ病を考えます。

多くの場合、仕事や人間関係に疲れてしまったことからの症状なので、まず原因になる事柄から離れ、休養します。休養することで、少し症状は改善します。

ただし、パニック障害やうつ病になってしまう人は、とてもまじめな人、正義感の強い人、責任感の強い人が多いので、なかなか自分からその原因を離すことができません。

誰かに指摘され、アドバイスされて初めて、原因を認識して、その原因から離れることを考える人も多いです。

症状が続くことでおかしいと思ったら、病院を受診しましょう。

薬物治療の流れ

病院では、症状が始まったころの生活や仕事、人間関係の状況を確認し、症状が出現した原因を探ります。

症状が強かったり、軽症であっても患者さんの希望があれば薬物療法を開始します。

また休養し、ストレスの原因から離れることを指示します。

薬物治療では、抗うつ薬や抗不安薬を用いて治療を開始し、まずは症状軽減に努めます。

服薬開始後、少しずつ気持ちがリラックスして神経の働きが正常化してくると、一時的にうつの症状が悪くなることがあります。

これは、緊張で張りつめていた交感神経が緩むことで生じる正常な反応です。

2~3週間以上薬を継続することで、不安感、緊張感が緩和され、症状が徐々に少なくなります。

同時にしっかり休養がとれていれば、日常生活に支障がなくなってくるでしょう。

徐々に症状は落ち着き、まったくいつもと変わらない日常生活を送ることができるようになります。

しかし、症状が落ち着いても半年くらいは薬の内服は継続し、その後特に問題がないようであれば薬物治療は終了します。

カウンセリングによる治療の流れ

少し、薬や休養で気分が落ち着いてきたら、カウンセリングの出番です。

認知行動療法や対人療法などで、考え方や感じ方の修正をすることで、より生活しやすく、再発しにくくしていきます。

カウンセリングは継続することで、自分の考え方を常に確認し、悪い方向に向かないようにいつも修正できる体制を整えます。

自分に自信がつき、いろいろな物事に対処できる力がつけば、カウンセリングからも卒業です。

一般的にはこのように治療を行いますが、現代のストレス社会では薬を使わずによくなる程度のパニック障害やうつ病の方も多く見られます。

その場合は、休養、カウンセリングのみでもよくなります。

ストレスの原因となっている物事のとらえ方を、誰かに話して修正することで理解、納得すればよくなることもあります。

日常生活に支障がないようであれば、病院に行くよりもカウンセリングルームを訪ねるほうがよいかもしれません。

***

多くの人がかかっているといううつ病。治療の方法には様々なものがあります。

日常生活に支障が出るほどの症状、動悸や過呼吸で救急車を呼ばなければならないほどの症状であれば、精神科の病院を受診して治療を受けることをお勧めします。

ちょっと不安、原因は大体わかっていて解消できるもの、ということであれば、カウンセリングルームを訪ねてみることもよいでしょう。

うつ病の患者さんの中には、外出が困難な方がいらっしゃいます。

そのようなときには、オンラインカウンセリングや、電話カウンセリングも有効です。

メールカウンセリングや電話カウンセリングを利用し、少しでも症状をよくしてから、病院を受診してみてください。

少しでも症状が軽くなり、毎日を楽しく過ごせるようになりますように。

参考文献
・American Psychiatric Association(2003)『DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引』高橋三郎・他訳,医学書院
・日本うつ病学会(2016)『うつ病治療ガイドライン』医学書院
公益社団法人日本精神神経学会|井上猛先生に「抗うつ薬とうつ病の治療法」を訊く
中村純(2005)「うつ病の薬物治療」,『うつ病』(第129回日本医学会シンポジウム記録集),pp52-56,日本医学会
・平木典子(2004)『新版 カウンセリングの話』朝日新聞社
・中河原通夫・久保田正春(2008)『抗うつ薬を飲む前に:その薬であなたの「うつ」は治るのか?』法研

 

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