更新日 2024年08月29日 | カテゴリ: 感情をコントロールしたい
物事を暗く捉える「ネガティブ・シンキング」と明るく楽観的に捉える「ポジティブ・シンキング」。 一見するとポジティブ・シンキングの方が良いように思えますね。 ところが、何につけても明るくポジティブという「行き過ぎた状態」は、却って人生に支障をきたしてしまうこともあります。
このような行き過ぎたポジティブ思考は「ポリアンナ症候群」という心の病気であることも。 ここではポリアンナ症候群について、その特徴や対策等をわかりやすく解説していきましょう。
ポリアンナ症候群の「ポリアンナ」とは、20世紀初頭に発表された小説の主人公ポリアンナのこと。 ポリアンナは「親の死」という悲劇に見まわれながらも周囲の優しさや親切という「良かったこと」に気づき、明るく健気に生きていきます。 このストーリー自体は非常に感動的であり、また主人公の行動にも問題はありません。
ただ「ネガティブな事態にあっても常にポジティブであろうとする」という特徴があることから、この疾患の名前として選ばれたようです。 実際のポリアンナ症候群の場合、内容はかなり異なります。
社会的・環境的に大きな問題(ネガティブな問題)に直面していてもその問題を直視できず、明るい側面ばかりに目が行ってしまい満足してしまう--「ポリアンナ症候群」とは、そのような心の病気なのです。
少々極端な例になりますが、例えば「家の電気系統が全て壊れてしまった」と考えてみましょう。 明かりも付かず、電気器具は一切使えない…不便極まりなく、生活が快適に送れない状態ですよね。 ところが「ポリアンナ症候群」の人の場合、ここで「テレビを観なくなって家族の会話が増えた」「洗濯機を使わないからエコロジーになる」という「良い側面」を探しだしてくるわけです。
一時的にはそのポジティブさは「挫けずにエライ」と捉えられるかもしれません。 しかしポリアンナ症候群の人の場合、その「良い側面」で満足をしてしまい、「電気系統を直す」というそもそもの問題解決に取り組まないのです。
例えば受験や就職・試験等の失敗、失恋、降格等、人生には様々なネガティブな事態が起こるもの。 その時に悩むことが全く無いと、反省もせず、成長もしないということになります。 ポリアンナ症候群の一見すると楽天的な姿勢とは、「現実を直視できない」という現実逃避の現れなのです。
ポリアンナ症候群の人は、自分に対する「無根拠な自信」を持っています。 特に過去に運の良さや土壇場での集中力等で成功した体験があると、「次もきっと大丈夫」と考え、問題に対する対策を練ろうとしません。
また両親が「才能がある」「やればできる」と過度な賞賛を与え続けてきたことが影響し、実際と見合わない実力の見積もりを起こしているケースもあります。 病気対策や生命保険、災害に対する保険等を考えるのも苦手で、常に「何かが起こってから行動を起こせば良い」という状態になりがちです。
常に現状よりも悪い状況を考え、「それよりは今の方が良い」と現状を肯定しようとするのも、ポリアンナ症候群の特徴のひとつです。
例えば「今の会社は激務だけれど、盆と正月に休めない人よりはマシだ」と考えたり、配偶者からの不遇に耐えかねる状態であっても「独り者になるよりはマシだろう」と考えたりするわけです。 常に比較対象とする悪い状況を考え出しやすく、周囲の「自分より悪い状況にある(と思える)人」を無意識に探していることもあります。
まずは自分を客観視することから始めてみましょう。 一所懸命に頑張ってきた、前向きに取り組んできたという「経過」にばかり囚われず、どれだけ「結果」を出してきたかを考えてみることも大切です。
ポリアンナ症候群の人は、いつも明るく前向きでいる自分を「善である」と捉えがちです。 しかし実際には、人は悩み苦しみながら成長をして進んでいくもの。 「ポジティブだし、悩んでいないのだから良い」という考えをまずは一旦捨ててみましょう。
現状の課題・問題を書き出し、その問題に対する「対策行動」を考えてみましょう。 問題解決に対する行動を思いつくには、多少時間がかかるかもしれません。 この時にも悩み、苦しむことを回避せず、正面から問題に取り組んでみることが大切です。
ポリアンナ症候群は、例えばうつ病のような心的症状・身体的症状を起こす疾患ではありません。 しかし極端な楽観主義がもたらすのは、社会生活の行き詰まりであったり、人間関係の破綻であったり、もともと本人が望んでいたものとはまったく異なる人生であることも多いのです。
「もしかしてポリアンナ症候群かも…」と思ったら、まずは「自分は今、現実から逃げていないか?」と客観的に振り返ってみましょう。 また自分だけで現実に立ち向かうことが難しいと思われる場合、家族や友人等の周囲に協力を依頼する、専門家に相談するといった対策を取ることも重要です。
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