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表現を通じて新たな自分と出会う「アートセラピー」| 臨床心理士 倉石 聡子

更新日 2018年07月11日 |
カテゴリ: 専門家インタビュー
表現を通じて新たな自分と出会う「アートセラピー」| 臨床心理士 倉石 聡子

ーー倉石先生はapconcept(アップコンセプト)というスタジオで個人やグループ向けのアートセラピー・ワークショップを実施しておられますね。どんなきっかけでアートセラピーを学ぼうと決意されたんでしょうか。


私はもともと音楽関係のプロモーターの仕事をしていました。音楽を聴くことによって癒される人たちがいること、音楽の持つ力はすごいな、と思っていました。でもいざ入ってみると、華やかな世界の裏側ではどうやったら売れるかという論理が中心で、売れるためだけに消費されていく音楽のあり方に違和感を持ったんです。

作り手であるクリエイターの近くにも薬物やうつの問題があったりと、表現しても表現してもハッピーじゃないところがあるんですね。自己表現って、もっと癒しにつながるものなのではないだろうか、ともやもやしていた時に、表現を癒しに使う分野があるということを知ったんです。それがクリエイティブ・アーツ・セラピー、すなわち芸術療法でした。

日本では専門家は少ないですが、アメリカではニューヨークに州認定の資格があるくらい専門的な資格で、「アート」「ドラマ」「音楽」「ダンス」「表現アーツ」の5つのうちいずれかを扱います。これだ、と思い留学して学び、帰国後は自治体や自らスペースを借りてセラピーを行ってきました。

もっと多くの方にアートセラピーを知ってほしいという思いもあり、2016年3月に、クラウドファンディングで内装費を募り、このapconcept(アップコンセプト)というスタジオをオープンしました。

その人のアートを「分身」として受け止める

ーーアートセラピーというのは、具体的にはどんなセラピーなのでしょうか。


「表現すること」って古代から人間の自然な営みですよね。火を囲んで踊ったり、洞窟に絵を描いたり。表現すること、手や体を動かすことそのものに、人は癒されるところがあります。

アートセラピーでは、立派な作品を完成させることが目的ではないので、うまくできたら褒めればいい、ということではありません。「うまければ褒める」というのは「うまくなければ褒めない」ということです。褒められたいと思うと、「褒められるように描く」となって、その人の本当に表現したいものは引き出されない。私が前にいた音楽業界のように、評価が伴った途端、表現には苦しみが伴うようになるんですね。

apconcept2

その人から出てきたものを「いい」「悪い」と評価することなく、ありのままをその人の分身として大切に受け止めて、この表現がその人にとってどんな意味を持つのか、ということを見つめていきます。

言葉で作品を振り返ることもありますが、人によっては話をしないこともあります。素材に触れてみて、そこから生まれるものをただ感じていきます。カウンセラー・クライエントの二者関係でなく、作品を含めた三者関係を作ることができます。

「あなたはどうか」と問われると答えづらいことも「これから何を受け取るか」と問いかけると、語られやすいことがあります。できたものを大切に、一緒に眺めるというだけでも、治癒的になりえます。ただ表現しておしまいではなく、セラピストと一緒に眺めながら気づきを得るという作業は、アートセラピーのもう一つの治癒的な側面です。

アートを通じて新たな自分と出会う

ーーアートセラピーは、どんな人に向いていますか?


言葉にするのが辛い体験を抱えた人、トラウマの治療に有効であることは知られていますが、基本的には誰にでも向いていると思っています。 表現することの癒しは、どんな人にも感じてもらえると思う。ただ、そのためには工夫が必要です。どんな大きさの紙を使うとか適した画材とか、その人の状態や課題、目的に合わせて素材やテーマを提案するのがセラピストの役割です。

例えば認知的・思考的な人は最初はアートに苦手意識を持っていたり、分析されると構えてしまう人もおられます。考えて描くようなテーマでなく偶発的に色や線が表れるような作業から、なんでこれが出てきたのか、と向き合うきっかけになったりします。アート自体の持つ、意識よりも無意識を引っ張り出してくる特徴をいかすことができます。

思考がぐるぐる悪循環を始めた時に、少し無意識からヒントを得るような感覚ですね。そういう意味では、ビジネスマンの方にも効果的なツールと言えそうです。意識には上がってこなかったものが、現れた作品を見て自分の世界観が見えてきた、という方もおられる。

アートを通じてもう一度自分と出会う、という体験にもなると思います。自分の内面と対話するような。働く人であれば転職や昇進など、変化のタイミングであったり、お母さんであれば自分の生活や人生を見直すきっかけであったり。親子や夫婦でのセラピーでは、コミュニケーションのツールとしてアートが役割を果たします。

家族で一つのものを作ると、言語とは違うやりとりが展開されるものです。シニアの方であれば、今までのライフステージで起きたことを振り返ったり、視覚化していく効果もあるでしょう。

心のケアを、カフェに入るように自然なことにしたい

ーーアートという切り口があると、最初に抵抗感なくセラピーに入っていくことができそうですね。この場所も、とてもおしゃれな空間で、一般的なセラピーを連想させません。


そうですね。それにこの場所も「アトリエ」という形で運営していますから、気負いなく入っていただけると思います。プログラムも様々で、オープンなアトリエのプログラムから、講座、子どもや大人のグループセラピー、個人セッションなど、様々な入り方があります。グループから入って個人セラピーを希望される方もおられますね。

心のケアも体のケアも、カフェに入るように気軽に行ける場所になるといいな、と思うんです。だからこの場所では月1回マルシェとして雑貨を販売する日もあったり。本当に困っておられる方も近所の方も遊びにくる感覚の方も、幅広く来られるのが特徴です。

ーー今後はどんなことに取り組んでいかれる予定ですか?


安全に心と向き合えるのがアートセラピーだと思っています。トラウマを抱えている方も、子どもも、大人も、幅広く使って頂きたいですね。この場所をもっと活用したいし、まだまだアートセラピーができる場所は都心には少ないので、仲間も増やしていきたい、と思っています。

それから、この場所で待っていても届かない困難にある子どもや大人、被災地の方など、自らの足で援助を届ける活動も、継続してやっていきたいですね。画材を持って、ガラガラとアートの出前のように(笑)会いに行ったり。できることを続けていきたい、と思っています。

ーー身近な素材から心に触れるきっかけを得られるアートセラピー、とても素敵だと思いました。ぜひより多くの方に知っていただきたいです。本日はありがとうございました。


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