更新日 2024年08月23日 | カテゴリ: うつ病・憂うつな気分
「うつ病等の心の病気って、病気かどうかはどうやって診断するのだろう」
この点を不思議に思っている人も多いのではないでしょうか? 身体的な病気の場合であれば、例えば血糖値・心拍数・体温といった数値が判断基準となりますね。 ところがメンタルヘルス関連の病気の場合には、このような身体的な基準値によって判断をすることはなかなかできません。
そのため精神科・心療内科といった専門医は、うつ病の判断基準について「DSM-5(DMS-V)」という診断基準を使っています。 ここではDSM-5について、その内容をわかりやすく解説していきましょう。
DSMとは「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」の略称で、日本語に訳すと「精神障害の診断と統計マニュアル」ということになります。 アメリカ精神医学会によって著作されている本であり、現在も同医学会によって厳密な調査・制作が行われています。
1950年台に第一弾である「DSM-1(DSM-I)」が発表されたころ、この書籍の制作の目的は「精神障害の実情を調査する」という統計調査的なものでした。
しかしその統計の多さやデータの正確さなどから精神障害診断における利用に耐えうることがわかり、1980年台に入って「DSM-3(DSM-III)が出版されてからは明確な基準(目安)を書籍内に記載するようになっています。
現在使用されている「DSM-5」はいわば「第5版」ということになるわけで、2013年に発行された最新バージョンです。
この他、精神科医が使用する判断基準としては世界保健機構(WHO)が発行する「ICD-10」等があります。
DSM-5では、以下の9つの症状を診断基準のチェック項目として挙げています。 実際の書籍における書き方がやや難解であるため、ここでは一般的な用語を用い、実例を挙げながら解説していきましょう。
「抑うつ」とは、気分が落ち込んでいる状況のことを指します。 実例としては以下のようなものが挙げられます。
・心が空っぽに感じられる
・漠然と哀しみを感じる
・わけもなく泣きたくなる
・心が暗く感じられる等
また幼い子供等の場合、落ち込みよりも焦燥感(イライラ・不満感)が強く出ることもあります。
興味関心の減退や喜びの心が減ると、日常生活では以下のような変化が見られます。
・新聞やテレビ・ネット等を見る気がなくなる
・今まで楽しんでいた趣味がつまらなくなる
・友人との会話に参加しなくなる
・否定的な発言が増える
・外出しなくなる等
・食欲が湧かない(箸が進まない)
・胃の痛み、吐気等を感じる
・「おいしい」とは感じないがとにかく食べたい
・ひとつの食べものばかりを偏食する(甘いもの等)
うつ病では激しい食欲の減退が見られることがありますが、反対にストレス状態による過食(食べ過ぎ)となることもあります。 体重増減の目安としては、1ヶ月で以前の体重の5%以上の変化が見られる場合には「大きな変化」と捉えられます。
例えば体重50キログラムの人の場合、2.5キロ以上太ったり、反対に痩せたという場合には危険信号というわけです。
睡眠障害には様々な症例がありますが、カンタンに言えば「今までとは違いグッスリと眠れない」というものを指します。また冬季うつ病、不定形うつ等の場合、「眠れない」というものだけでなく「眠りすぎる(睡眠過剰)」という症状が表れることもあります。
・ふとんに入ってからも寝付けない
・一度寝付いても2~3時間で目が覚める
・夜中・明け方等に目覚めると眠れなくなる
・朝に目覚めても眠った気がしない
・いつまでも眠っていたい
・日中も常に眠気がある 等
専門用語としては「精神運動性の焦燥、または制止」と書かれますが、焦燥とはとにかく心が落ち着かず、行動に及んでしまう状態です。反対に制止とは、考えたり動いたりするパワーが低下してしまっている状態を指します。
・(不安な気持ち等から)歩き回ることをやめられない
・家を出たり入ったりし続ける
・相手を選ばず電話をかけて話そうとする等
なお焦燥というと単なる「イライラ感」を想像される人が多いですが、この場合の「精神運動性の焦燥」は単に「イライラしていて落ち着かない」といった主観的なものではなく、客観的に見た行動が伴うものを指します。
専門用語では「易疲労性(いひろうせい)」と言います。
・ほとんど歩いていなくても疲れる
・今まで行ってきた作業や家事等が続けられない
・「がんばろう、やろう」という気持ちにならない
ポイントとしては「実際には体力を奪われるほどの行動をしていなくても、物理的な疲れを感じる」という点が挙げられます。
無価値感や罪責感と呼ばれる感情です。実際よりも自分の価値を非常に低く感じたり、実際よりも自分を「悪い人間である」と判断することもあります。
・この会社(集団、学校)に居ても役に立たないと感じる
・「誰も自分のことを好きではない」と思う
・「自分は罰せれるべきだ」と思う
うつ病では集中力の低下、もしくは思考力の低下が見られます。また自分の判断に自信が持てなくなることから、決断力も著しく下がる傾向を見せます。
・会社での作業・家事等に集中できない ・テレビや雑誌等の内容、会話内容などが頭に入らない ・何かを考えようとしても投げ出してしまう ・今日の献立、好きな色といった単純な選択肢でも決定ができなくなる
・死について繰り返し考える
・ボンヤリとだが「死んでしまいたい」と思う
・自殺をしようという計画を立てている等
以上の9項目のうち、項目1 )及び項目2 )のいずれかは必ず含む5つ以上の項目の症状が2週間以上継続されている場合には、うつ病である可能性が高いと判断されます。
ただし身体疾患(体の病気等)で処方された薬等によって上記のような症状が見られている場合には、この診断基準はあてはまりません。 現在薬物治療中の人の場合には処方内容・治療内容等を主治医に別途確認する必要が出てきます。
DSM-5の診断基準はあくまでも「診断の指標(目安)」です。 うつ病等の心の症状には個人差も多く、必ずしもこれらのリストだけですべての病気を診断しきれるわけではありません。
そのため精神科医・心療内科医等は、以下のような点も細かにチェックしながら「その人の状態」を診断していきます。
・ひとつひとつの症状の現れた時期
・症状の重さ
・どのような経緯で症状が現れたのか
・日常生活にはどの程度の支障が出ているのか
・会社・家庭の中での支障範囲はどの程度か
・今までどのような病気にかかったか
・本人の元々の性格にはどんな資質があるか
・本人の元々の日常生活はどんなものか
・どのような家庭環境で過ごしているか 等
つまり「DSM-5が絶対で、これだけあれば誰でも診断できる」というものではないのです。
「自分はDSM-5で6つ以上もあてはまる部分があったから、うつ病に決っている!」と精神科医を訪れた人が、「うつ病ではない」と医師から診断をくだされるというケースもあります。
また反対に「自分は項目にあてはまらないと思うから、うつ病ではない」と思っていた人が重いうつ病であったというケースも少なくありません。
DSM-5は今後も改定が続けられ、「DSM-6」そして「7」とより正確性を高めた診断基準が設けられることが予測されています。 しかし個人差の大きい精神医学の症例の場合、診断基準が「目安」であるという点は今後も変わらないと言えるでしょう。
患者の状態を詳細に把握した上で診断を下すという専門医の繊細な対応が必要とされるのです。 「DSM-5の項目、最近の状態にあてはまる部分が多いかもしれない」と感じたら、早めに専門医・カウンセラーに相談をしてみましょう。
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